
「Getty Images」より
親と離れて暮らす人は、たまに帰省するたびに親が年を取っていくのが顕著に感じられて、あと何度会えるのだろうかという思いに取りつかれることがあるだろう。そして、自分はずいぶん親不孝なのではないかという罪悪感にさいなまれ、同居すべきか悩んでいるかもしれない。
政府は少子化対策の観点から2015年3月に「三世代同居・近居の促進」を打ち出した。親と同居している夫婦は出生率が高いというのがその理由だ。
昭和の時代、三世代世帯の孫として育った筆者にとって、『サザエさん』一家は、馴染み深い三世代同居だった。平成の時代もまもなく終わろうとしているが、この30年で三世代同居の意識はどう変わったのだろうか。はたして政府の推進する「三世代同居・近居の促進」によって、家族みんな仲がいい『サザエさん』のような憧れの三世代同居は増えていくのだろうか。
政府の掲げる「三世代同居・近居の促進」
内閣府が20~79歳の1639人を対象とした2014年の調査では、三世帯同居を理想とする人が20.6%、近居を理想とする人が31.8%いた。実際の同居率はそこまで高くない。同居をしたくてもできない人のため、政府は、三世代同居のためのリフォームなどを補助金や減税で優遇したり、近居促進のためにUR賃貸住宅【*】の割引制度を設けたりしている。
一般的に、子育て支援を親に期待する場合は近居、介護する必要がある場合同居を選ぶ傾向があるそうだが、こうした政策はいずれも家庭での自助・共助を狙ったもので、その目的は社会保障費を抑制することにある。
この政策については、初めから効果を疑問視する声も上がっていたが、実際同居の世帯数にどのような変化があったのか。
減りつつある三世代同居
同居の世帯数については、30年前の数字と比較してみると、世の中の流れがわかる。全世帯に占める三世代世帯の割合は、1986年には15.3%だったが、少子化社会対策大綱が策定された2015年は6.5%にまで減った。その後も、2016年は5.9%、2017年は5.8%とさらに減っている。
介護目的の同居であれば、65歳以上の人がいる世帯だけに絞ってみたほうがわかりやすいかもしれない。65歳以上の人がいる世帯の中で、三世代世帯は1986年が44.8%で、2015年が12.2%、2016年が11.0%、2017年が11.0%であった。
どちらの数字においても三世代世帯は30年の間に激減しており、政策の効果は見られない。