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児童相談所の根本的な組織変革とは 専門性、第三者チェック、警察との連携を

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「Getty Images」より

 前回前々回の記事では、児童相談所が保護した子供を親元へ帰してしまう理由、虐待をする親へのカウンセリングについて取り上げた。では、そういった問題を解決するために、児童相談所の構造はどう変わっていくべきなのだろうか。

 引き続き、東京都児童相談所に児童心理司として19年の勤務経験を持つカウンセラーの山脇由貴子氏に、話を伺った。山脇氏は児童相談所の具体的な改革案を提示する。

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山脇由貴子・心理カウンセラー
横浜市立大学心理学専攻卒業後、東京都に心理職として入都。都内児童相談所に心理の専門家として19年間勤務し、現在は自身のオフィスで「女性の生き方」について相談を受け付けている。 児童虐待についても積極的にメディアで発言しており、数々のテレビ番組への出演経験を持っている。

虐待専門部門をつくる必要がある

――前々回の記事で取り上げたような、ハイリスク家庭でも一時保護を解除せざるを得ないという問題を解決し、児相が親子の健全な関係性構築のための組織として適切に機能していくためには、どのような構造改革が必要だとお考えですか。

山脇 ひとつは、相談機関の部門を分けることだと思います。本来であれば、国がしっかり虐待の専門機関を作らなければならない時代に入っていると思うのですが、それを自治体がやれと言うのであれば、障害・性格行動・不登校・非行などの部門と、虐待だけを扱う部門は絶対に分けるべきです。

――児童相談所は、0歳から18歳までの子供に関する全ての相談を受けているんですよね 

山脇 そうです、相談内容は多岐にわたります。しかし虐待の件数が増えたことで、非行などの相談をお断りする場合もあります。私のオフィスにも、「児相では受けてもらえなかったんですが……」とお子さんの非行相談のお電話をかけてくる方もいらっしゃいます。

――相談部門を分ければ、児童福祉司が虐待の対応に集中できる?

山脇 専門の部署がそれぞれの担当に集中できるようにすべきです。虐待部門を作った後は、そこでも役割をしっかり分けます。ひとつは、強硬に子供を保護して「虐待から子供を守ることに尽力するチーム」。このチームは親と敵対もしますが、何を言われても屈することなくとにかく子供を守ります。

そして、親の反省や更生を見極めて「親元に帰してよい」と冷静に判断した場合、今度は家庭復帰支援チーム、つまり「親との信頼関係を作るチーム」が引き継ぎます。

なぜなら、ひとつの担当チームが親と敵対しながら信頼関係を作ることは不可能ですよね。家庭ごとにひとりの児童福祉司がつき、親子の引き剥がし(一時保護)からそれぞれのケア、保護解除後の見守りまでやらせているのが現状で、だからそれぞれの場面で適切な役割を果たせないのだと思います。親との関係性を悪くしたくないために親の脅迫に負けて子供を帰してしまうこともあるし、一時保護の際に親と敵対したことで子供を帰した後も親との信頼関係を築けず連絡が途切れてしまうこともあるのです。

――ひとりの児童福祉司がひとつの家庭の案件をまるごと引き受ける、というのはデメリットが大きいのですね。

山脇 そしてもうひとつ重要なのは、第三者のチェック機能を設けることです。虐待があるのかないのか、家に帰していいかどうかなど、児童福祉司の判断をチェックする立場の人員も必要です。

現在でも、児童福祉司は自分の判断を管理職会議で報告し上司の了承を得るのですが、管理職が児童福祉司の判断にNOを出すことはほとんどなく、形骸化しています。第三者機関が、児童福祉司の行いや判断を記録し、チェックする機能を担うべきです。

――どうして管理職は児童福祉司の判断をそのまま受け入れてしまうのでしょうか。

山脇 1件の虐待案件に対して、一貫して関わるのは担当児童福祉司ひとりだけです。面接は1対1で行っていけないルールになっているので、児童心理司も1名加わる場合もありますが、あとは必要に応じて係長などが入ってくる程度です。そのため、この子の親がどんな人なのか、どのような家庭なのかという情報は、担当福祉司以外が詳細を把握できません。また児童心理司の権限は児童福祉司よりも小さいです。第三者機関を設け、記録をとりながら児童福祉司の判断をチェックする必要があります。

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