児童相談所の根本的な組織変革とは 専門性、第三者チェック、警察との連携を

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児童相談所はもっと警察を頼っていい

――児童相談所の繋がりも重要ですが、児童相談所と子供の親との間でトラブルが発生した場合、たとえば親がとても暴力的な態度で話し合いができないとなった場合などは、警察と連携することも視野に入れていいですよね。

山脇 もちろんです。110番通報をして警察に対応してもらうことは可能です。しかし、児相は自分たちが持っている権限が大きいので、「自分たちでやらなくては」という意識の人が多い印象です。「警察の仕事を増やすのは悪い」といった雰囲気なんです。ですが、警察のほうが職員は多いですし、頼るべきところは頼ってよいと私は思います。

警察のほうが人手も多いし、子供の虐待に熱心な警察官も大勢います。親が怖いのであれば、身を守ってくれる人が付いていてくれたほうが絶対にいいじゃないですか。警察にも児相担当を作ってもらって、常に連携できるようにすることが理想です。

――2月に兵庫県で9歳の小学3年生児童が、「お母さんに平手でたたかれた」と自ら110番し、警察が動いた事件がありました。母親は「学校に行かせたかったのでビンタした」と供述し、警察は常習性を調べているとの報道でした。警察も家庭内の事案だと楽観視せず、児童虐待には積極的に介入していく姿勢になっているのかもしれません。

山脇 流れとして、警察も子供が助けを求めたら「即保護」という空気になっているようですね。警察で保護した子供は、そのまま児相に連れて来られます。すると児相は受け入れを拒否できませんから、子供は警察に駆け込めば一番確実に保護してもらえる、と言えます。

――学校からの通報の場合は、強制力がない?

山脇 学校からの通報は、子供の体に傷や痣がそんなになければ「ちょっと一旦様子見てください」とか「どうして怪我したのか子供に聞いてください」とか「親に聞いてみてください」と保留にしてしまうのが、今までの流れだと一般的でした。

――それもこれまでお話していただいたように、構造的な問題によるところが大きいのでしょうね。

山脇 児相と警察との連携は、もっと強化されていいはずです。千葉県野田市の事件では父親が威圧的な態度で教育委員会も屈してしまったとのことですが、もし恫喝されたのであればそこは警察を呼べばよかったのではないかと思うんです。児相職員による家庭訪問だって、警察官に同行してもらうことは可能です。

私は最寄の警察署に個別で相談して、家庭訪問に同行してもらったり、パトロールを重点的にやってもらったりもしました。親との面接に同席してほしいと要請したっていい。「この子がフラフラしていたら保護してください」と頼んでおくのもいい。お願いすれば丁寧に関わってくれるんです。家庭訪問を拒絶する親も、おまわりさんが来ればさすがに対応はします。

――警察との情報共有は重要ですね。

山脇 本来は虐待被害者として保護すべき児童なのに、非行という形で現れてしまってる複雑なケースもありますから。たとえば万引きで捕まえても、一度は児相に児童虐待の履歴がないか確認するなど、情報共有は徹底してほしいと思います。万引きにしてもなぜしたのか、家に食べ物がなかった可能性だってある。親に連絡するとかえってその子供が危険なケースだってあるわけです。

虐待をする親への心理テスト

――山脇先生は長年、児童心理司として児相に勤めていらっしゃいましたが、心理の面で改善できることはあるのでしょうか

山脇 虐待をする親には心理テストを受けてもらいたいですね。日本人は特にそうなのですが、人間の醜悪な部分を見たくないという気持ちが強いですよね。なので、心理学の文化も全然浸透しませんし、児相でも心理司の立場は弱いです。

しかし、心理と体は密接に関係しているので、虐待の被害に遭った子供に、「あなたの具合が悪いのは、お母さん・お父さんの行動が原因なんだよ」と言うと、「自分が悪いからではなかったんだ」と、本当に視界が明るくなるんです。

また、虐待をしてしまう親は何らかのトラウマを抱えている場合もあるので、心理テストは必須にすべきです。

――気軽な心理テストは人気だと思いますが、詳細なテストをすると人間の醜悪な部分が出るのですか?

山脇 出ます。でも、自分の醜悪な部分を知っておいたほうが生きやすくなるんですよ。欠点は誰にでもあるので、ダメなことや恥ずかしいことではありません。ただ自分の欠点、たとえば、支配性が強い、攻撃性が強い、攻撃されやすいなどの特徴をすべて知れば、失敗を未然に防ぐことも出来ますよね。そこが重要です。もっと多くの人が自分の欠点と向き合えるようになるといいですよね。

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