ピエール瀧逮捕後に繰り返される“リンチ”的な報道、加罰や辱めよりすべきこと

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 評論家の荻上チキ氏を中心に、松本俊彦氏(国立精神・神経医療研究センター)、上岡陽江氏(ダルク女性ハウス代表)、田中紀子氏(ギャンブル依存症問題を考える会代表)といった専門家が集まって、「薬物報道ガイドライン」というものが発表されている。

 2017年につくられたこのガイドラインでは、薬物に関する報道を行ううえでメディアが「避けるべきこと」と「望ましいこと」が具体的に言及されている。

 そのなかの「避けるべきこと」には、こんな項目があった。

<薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと>
<「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと>
<「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと>

 これらはまさしく、今回の報道で行われていることである。

 「ドーピング」という筋違いの言葉を出して作品の自粛を煽った『ワイドナショー』にせよ、<裏切りは長年にわたっていたようです><悪らつ性っていうか、非常に悪い印象を持ちますよね>といった言葉でピエール瀧の人格そのものを否定した『ウェークアップ!ぷらす』にせよ、その基準からは著しく外れている。

 彼らのような名の知れたコメンテーターの発言により、「違法薬物をやったら人生はもうおしまい」といった考えが強化されてしまえば、依存に苦しんでいる人が専門機関に助けを求めることに躊躇するようになってしまうし、その結果、ますます状況を悪化させてしまうことも十分考えられる。

 だから、ガイドラインではそのような状況を促す報道の仕方を避けるように推奨しているのだ。このことはテレビ番組をつくるスタッフも知っているはずだ。

 では、なぜ、今日的な基準での報道がなされないのか?

 それは、社会のルールから逸脱した人間は、どれだけ見せしめにしてもいいし、どれだけ叩いてもいいという「ムラ社会」のルールに沿って番組をつくる方が、より手軽にセンセーショナルな番組をつくることができるし、より手軽に世間の耳目を集めることができるからだ。

 しかし、こういったメディアのあり方自体が、日本社会の閉塞感を生み出していることは間違いない。不当なリンチのような報道のあり方は見直されるべきだろう。

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