
「いだてん」公式Twitterより
今月13日に、コカインを使用したとして麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたピエール瀧(本名・瀧正則)。瀧容疑者は容疑を認め、20代の頃からコカインを使用していたと供述しているという。供述内容が事実ならば、瀧容疑者はコカインを使用しながらミュージシャンや俳優として長く表舞台に立ち続けていたことになる。
しかし、コカインや覚せい剤や大麻などの「違法薬物」使用者に対して世間が抱いているイメージと、表舞台で活動していた瀧容疑者の姿は、およそかけ離れたものだろう。おそらくだが、余裕綽々の好人物に見えていたはずだ。芸能界の友人たちや地元民らも「いい人だった」と口をそろえる。確かに人当たり良く付き合っていたのだろう。
ピエール容疑者の逮捕への反応から思い出されるのが、昨年11月放送のドラマ『相棒』(テレビ朝日系)に登場した「シャブ山シャブ子」(演:江藤あや)だ。「シャブ山シャブ子」はその名の通り重度の覚せい剤依存患者で、奇声をあげながら刑事をハンマーで殺害した。ヨレヨレの服にボサボサの髪、虚ろな目という“いかにも”なその風貌に、ネット上の反響も大きく、「怖すぎ」「リアル」「トラウマになる」といった声が集まっていた。
「シャブ山シャブ子」になる薬物依存症患者はほぼいない?
しかし放送後、複数の有識者が「あんな“覚せい剤依存症患者”は実在しない」「偏見が治療の妨げになる」と、声を上げている。
たとえば薬物依存症患者の治療に携わる精神科医の松本俊彦氏は、「プレジデントオンライン」で以下のように指摘した。
<私は20年あまり薬物依存症の治療にかかわってきましたが、率直にいって、あんな覚せい剤依存症患者はいません。危険ドラッグやある種の幻覚薬を一緒に使用した場合、あるいは、他の精神障害を合併する複雑なケースならいざ知らず、少なくとも覚せい剤だけの影響でああいった状態を呈するのはまれです>
過去にあった<覚せい剤常習者による凶悪犯罪>でも、<薬物の影響がことさらに誇張されているケース>が少なくなかったという。つまり、現実の薬物依存症者が「シャブ山シャブ子」のような振る舞いをすることは、ほぼないのだろう。
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