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イチローとGENKINGとバイトテロの承認欲求は何が違うのか? 

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写真:AFP/アフロ

  マリナーズのイチロー選手が、ついに引退を発表した。「これからは草野球を極める」「貫いたのは野球愛」などのイチロー節も話題となった引退会見では、スター選手ならではの重圧に苦しんだ心情を率直に吐露する場面も見られた。

「やはり、誰かの思いを背負うというのは、それなりに重いことなので。そうやって一打席一打席立つことって簡単ではないですね。だから、すごく疲れました」

  イチロー選手でなくても、現代社会を生きる私たちは“SNS疲れ”することがある。いいねの数やアクセス数の爆上げを狙っては、センセーショナルな動画を投稿して注目を集めようとする。

  SNS上のこうした行動は単に「認められたい」という欲求から来るケースが多く、イチロー選手と同一視はできない。周囲の期待値があるからというより、他者の視線やプレッシャーを本人たちが勝手に感じているから、というほうが正しいだろう。例の「バイトテロ」の若者たちも、そんな承認欲求の犠牲者といえるかもしれない。

 大戸屋騒動後の2月19日に放送されたテレビ朝日系『ワイド!スクランブル』に、『「承認欲求」の呪縛』の著者・太田肇氏が出演。バイトテロが起こる背景として、「承認欲求が間違った方向に働いた結果」と指摘した。

 同番組で太田氏は、承認欲求に関するチェックリストを提示。「SNSでいいねがほしい」「周囲に嫌われたくない」「自分の個性をもっと尊重してほしい」など計7項目にすべてあてはまれば“バイトテロ予備軍”だと警鐘。同時に、「承認欲求はそもそも、老若男女、誰でも持っているもの」との見解も示した。

 「注目されたい」「認められたい」という欲求は、今回騒動を起こした若者たちに限らず、誰が持っていてもおかしくない。むしろ持つほうが健全という見方もできる。バイトテロのような歪んだ形でそれが出てしまったのは、自分の欲望についての自覚やコントロールする力が足りなかったからといえるだろう。「一気に高みにいこうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないから、ときに後退もしながら地道に進むしかない」(引退会見でイチロー選手が発した言葉)ということも噛みしめておきたい。周囲の評価や他者の視線に振り回されないためにも、まずは自己のなかに隠れる「欲求の正体」を正しく知ることが重要だ。

心理学者マズローが提唱した「欲求5段階説」

 そもそも承認欲求とは、米国の心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求5段階説」のなかに位置づけられる欲求のこと。欲求5段階説は人間誰しもが抱える欲求であり、5つの階層レベルに分かれる。

1.        生理的欲求(食べものや性、睡眠などの欲求を満たしたい)

2.        安全の欲求(身の安全、安定的な生活を確保したい)

3.        所属と愛の欲求(誰かとつながっていたい、家族や組織など共同体に属したい)

4.        承認欲求(自分を認め、他者にも認められたい)

5.        自己実現の欲求(自分にしかできないことを成し遂げたい)

 1~5番の欲望のうち、低いものほど満たしやすく、高いものほど手に入れるのが難しいといわれる。また、通常は低いものから順に芽生え、ひとつずつレベルアップするのが一般的な欲望の起こり方だが、実際には個人差がある。

 また承認欲求は、承認を求める先が自己か他者かで異なる。自己承認とは「自分で自分を認めたい」とする欲求。他者承認とは他人から認められたい欲求で、バイトテロの動機もこれにあてはまるだろう。

 自己実現の欲求も、正確には「超越的でない自己実現の欲求」と「超越的な自己実現の欲求」の2パターンがある。両者の違いは、「至高体験を持つかどうか」。自己実現して満足する人もいれば、それに飽き足らずさらに高みを目指そうとする人もいる。自分を越えた先に、「人生のなかで最高の境地=至高体験」が待っているのだ。

 何をめざし、どうありたいかはそれぞれの人生で異なる。歴史上の偉人や現代の有名人を参考に、欲求との向き合い方を見てみよう。

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