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あなたの親の財産、意外とあるかも? 相続税逃れのためだけでない「生前贈与」のやり方

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生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。近頃、相談顧客の話を伺っていると高齢者の金銭事情の二極化が進んでいると痛感します。

 日本人の預貯金残高は増え続け2017年に1,000兆円を突破しました。ピンとこない数字ですが、人口で割ると1人800万円ほどになります。でも、実際には日本人全員が平均的に800万円の貯蓄を持ち合わせているわけではありません。一部のお金持ちを除くと大半が高齢者に偏っています。

 二極化ですから、お金がほとんどない高齢者だけでなく、この分だと一生の間にお金を使い切らないだろうという高齢者も多くいます。しかもそういう方は、特段のお金持ちだったわけではなく、会社員や公務員で勤め上げた中流家庭だったりするのです。

 最近、そんな「“意外とあった”親のお金」をどうするかについて、40代中盤辺りの「子の立場」の方からちらほら相談を受けることが増えてきました。そこで、今回は「贈与」の各種制度についてお伝えしておきます。基礎的な事項を解説したいので、本記事で「お金」を指すのは、不動産等の資産ではなく、もっとも分かりやすい「預貯金」のことだと頭に浮かべながら読んでいただければと思います。

相続と贈与の違い

 人が亡くなった場合、遺されたお金を遺族が「相続」することになります。相続するお金が、非課税の枠(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると遺族は相続税を払うことになります。実際に相続税の対象となる方は10%を切るほどなので、ほとんどの相続に対して税金がかかりません。

 それに対し、「生きている人」が家族などにお金を渡すこと、そしてそのことをお互いに認識している場合は、「贈与」と言います。

 相続税がかからないように、生きているうちに少しずつ贈与しておこうとする人が出てくることは想像できると思います(あとで説明しますが「贈与税」も存在します)。こういった考え方を一般に「生前贈与」と言います。なお、説明した通り、贈与はそもそも生前に行うものなので、生前贈与は法律上存在しない言葉です。相続と混同する方が多いので、誰かが「生前」と付けたのかもしれません。

 相続と贈与の違いがわかったら、「意外と持っている」高齢者を思い浮かべてください。お金の遺し方についての考え方や行動は大きく3つに分けることができます。

Aタイプ:ほぼ何も考えていないが、できるだけお金を減らさないようにしている。
Bタイプ:お金を遺したら子に税金がかかるのだろうか?と思いつつ行動に移していない。
Cタイプ:今のうちに少しずつ子や孫にお金を渡しておこうと行動に移している。

 ABの方は先に挙げた相続税の基本をまず確認しましょう。今からでも遅くありません。今日お話したいのは、「今のうちに家族にお金を渡したい」という人が知っておくべき6つの贈与について、です。

6つの贈与の基礎知識

 ここで紹介する6つの贈与は、私のオリジナルのネーミングになります。

①基本贈与

 贈与の大原則であり基本型。1月1日から12月31日までの1年間に1人110万円までを受け取る分には、贈与税がかかりません。例えば、300万円を3人の子にそれぞれ贈与する場合、贈与税はかからないことになります。

 毎年110万円までですから、10年間もらい続けると1,100万円まで非課税で受け取れることになります。ただし、毎年しっかり110万円ずつもらっていると、税務署に「相続税を逃れるために少しずつお金を移しているんじゃないの? 贈与税がかからないギリギリの金額なんて怪し過ぎる!」と目を付けられる可能性も……。最悪の場合、過去に遡って税金がかかる可能性があります。

 1年間に200万円を受け取った場合は、110万円を超えた90万円に対し贈与税がかかります。この場合最低税率の10%となり9万円を納める必要があります。

②居住用不動産の夫婦贈与

 婚姻期間が20年以上の夫婦間のみに認められる特別な制度です。居住用の土地や建物、または、居住用の土地や建物を買うためのお金であれば、①の110万円のほかに2,000万円まで非課税で受け取ることができます。同じ配偶者からの贈与は一生に一度だけ認められます。

③相続前倒し贈与

 子や孫に対して認められる特別な制度です。60歳以上の親が、20歳以上の子や孫に贈与する場合、2,500万円までは“一旦”非課税となります。ただし、①との併用ができないので、どちらか選ばなくてはなりません。

 この制度は「相続時精算課税制度」といい、親に相続が発生した(親が亡くなった)際に計算し直すことになります。“一旦”というところがポイントなのです。

 基本、贈与は1年に110万円を超えたら税金がかかるのに対し、いずれ起こる相続は〈3,000万円+600万円×法定相続人の数〉という大きな金額まで非課税になります。非課税枠の一部を先に使わせてもらおうというイメージですね。

④住宅取得用贈与

 子や孫に居住用の住宅を購入する資金を贈与する場合に限られる制度です。住宅をいつ契約したのか、その住居が省エネ住宅かどうかなどによって変わりますが、消費税8%の間は最大1200万円まで、消費税10%になれば最大3000万円までは非課税です。平成32年4月以降、非課税額が下がっていきます。

⑤教育資金贈与

 子や孫が30歳未満で、かつ、教育資金として使う場合に限り1500万円まで非課税で贈与を受けることができます。

⑥結婚・子育て資金贈与

 子や孫が20歳以上49歳以下で、かつ、結婚や子育てのために使う場合に限り1000万円までは非課税で受け取ることができます。

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