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山崎育三郎主演、ドラァグクイーンミュージカルの傑作「プリシラ」をいま観るべき理由

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 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、ときに舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 社会に多様性が浸透するのは、いつでもカルチャーが大きな入り口になるものです。2018年のアカデミー賞では受賞スピーチの多くでジェンダー問題がフォーカスされたのに、今年はノミネートされたのが白人男性だらけだと批判が集中。一方でレッドカーペットでは、毎年ジェンダーフリーなファッションが注目される俳優、ビリー・ポーターがゴージャスなタキシードドレス姿で登場し、絶賛を浴びました。ポーターはゲイであることも公表しており、LGBTという言葉は、多様性とはひとつの同義語のように社会に広がってきたように思います。

ドラァグクイーン3人、旅に出る

 近年、LGBTにはもうひとつ、「Q」という概念も示されるようになりました。「クィア」「クエスチョニング」と呼ばれ、体と心の性自認や、恋愛対象と性愛対象が異なるなど、性的志向がはっきりわけられない性的少数者全般をさすものですが、「LGBTQ」への世の理解は、まだ深まっているとはいえないかもしれません。現在上演中のミュージカル「プリシラ」は、そんな「Q」といえる存在が主人公。映像作品でも人気のミュージカル俳優、山崎育三郎が、女性的なゲイでありながらも妻子への愛を見つめなおすチャーミングなドラァグクイーンを演じています。

 オーストラリアのシドニーに住むドラァグクイーンのティックへ、砂漠の中にある街アリス・スプリングスのカジノでのショーの誘いが届きます。オファーしてきたのは、ティックと別居中の妻のマリオン。ふたりには息子のベンジーがいますが、女装姿のショーで生計を立てているティックは、自分が息子にとって理想的な父親ではないという負い目があり、まだ息子に会ったことがありませんでした。

同性愛ゆえタブー視されたミュージカル作品が、普遍的な家族愛を描く名作に変容した時代の変化

 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では…

ウェジー 2018.06.20

 ショーへの出演と息子に会う決意をしたティックは、ショービジネスから引退した往年の名ドラァグクイーン、バーナデット(陣内孝則)と若くて魅力的なアダム(ユナク・古屋敬多のダブルキャスト)を誘い、「プリシラ号」と名付けたバスでう砂漠を横断する旅に出ます。目指すは、アリス・スプリングス。

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