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山崎育三郎主演、ドラァグクイーンミュージカルの傑作「プリシラ」をいま観るべき理由

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 性自認が女性であるトランスジェンダーのバーナデットは、性転換手術をしたことで愛する家族から拒絶されており、ゲイのアダムは、父親から受けた虐待の傷を引きずっています。ティックが既婚者で子供までいると知り、ふたりは複雑な気持ちを隠せませんが、一度は真剣に添い遂げようと思ったこと、しかしひとつの家庭にふたりの「妻」は不要だからと別居していると聞き「そういうひとに出会えただけでもよかった」「ちょっとだけうらやましい」と励まします。

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ウェジー 2016.03.25

 ティックは女性的なゲイですが、心から愛しているのは妻子。そのため山崎育三郎はカジュアルな男装ですが、ときおりみせる女性的な仕草はナチュラルなもの(故障したバスに全力で飛び蹴りする体当たりぶりも、大受け)でした。女性を愛せるなら“ストレート”として生きてもいいはずだけれど、彼があるがままにいられるのは、ゲイの仲間内の中。「G」や「B」などとクッキリ区別がつくものではない性的マイノリティの揺らぎと複雑さに説得力を持たせたのは、定評ある歌唱力以上の演技力を感じさせるものでした。

「プリシラ」が教えてくれるもの

 バーナデットは常にメイクもバッチリの女装姿ですが、時にキツい下ネタをかましてもエレガントな陣内孝則は、性的マイノリティへの差別の厳しい時代をサバイブしてきたバーナデットの包容力そのもの。ショーシーンでは山崎育三郎やアダムがナマ脚を披露しているのに対ししっかりタイツをはいていましたが、劇中「おばあちゃん」と揶揄されるバーナデットの年配男性という設定にしては女装姿がちょっとキレイすぎてしまっているので、そこも納得かも。

 3人は同じドラァグクイーンですが、当然ながら個性や思考、生き方はそれぞれ違います。「プリシラ」は、まだ社会がLGBTQを理解していない時の話という設定ですが、妻マリオンは社会の枠からはみ出ているティックのそのままを受け止めてくれ、そんな彼女に慈しまれて育ったベンジーにとっても、パパはトム・クルーズ以上のヒーローでした。人生や家族の在り方は、レインボーカラーのように色が違って当然のもの。「プリシラ」は、性的志向で人をカテゴライズすることの無意味さを、ディスコミュージックとともに吹き飛ばしてくれるといえるのではないでしょうか。

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