
「Getty Images」より
アニメは日本が世界に誇る文化──耳慣れたこのフレーズもそう遠くない未来に「過去」のものとなってしまうかもしれない。
2019年3月5日放送『クローズアップ現代+』(NHK)の特集「どうなる? 日本のマンガ・アニメ~中国 急成長の衝撃~」は衝撃を与える内容だった。番組では、かつて日本のアニメ作品の制作下請けをやっていた中国のアニメ業界が、現在では逆に中国でのアニメ作品の制作を日本に出すようになり、さらに、その仕事では関わるスタッフに対して日本のアニメ制作の現場とは比較にならない好条件が提示されていると報じたからだ。
番組では大連にあるアニメ制作スタジオ・Be top大連が取り上げられていた。この会社は15年前に設立されたが、その当時はほぼすべての仕事が日本で企画されたアニメ作品の下請けであったという。しかし、現在では3分の2が中国向けのアニメ作品の制作になり、スタッフも日本の下請けメインの時期の10倍になった。さらに最近は自社制作のオリジナルアニメも手がけるようになり、その作品には登場人物のなかに忍者のキャラクターを入れるなど、あらかじめ日本の市場での展開も考えたうえで企画が考えられているという。
そういった流れのなか、中国で企画された中国国内向けアニメ作品の制作を日本のアニメ会社が請け負う例も出てきた。しかも、その仕事には日本のアニメ業界では異例の好待遇が用意されているという。
アニメ業界では契約社員の雇用形態で働くアニメーターも珍しくないが、この仕事は正社員で募集され、家賃補助もあり、さらに、残業の少ない労働環境が整備されているという。カラード・ペンシル・アニメーション・ジャパンの江口文治郎取締役は、『クローズアップ現代+』でこのように語っている。
<日本にアニメ業界って、なかなか厳しい状況に置かれているなかで、どんな労働環境で働けるかみたいなことを、すごく気にされている(専門学校の)生徒さんとかも多くて。そういう方々に比較的支持されているのかなと>
Netflixも日本のアニメ業界に参入
日本のアニメ業界に外資の波が押し寄せる状況は他にも起きている。
Netflixは日本のアニメ制作会社と組んでオリジナルアニメ作品をつくる流れを進めている。アニメに限らず実写もだが、Netflixは潤沢な製作費を投入して作品を制作する態勢を整えていることでよく知られており、Netflixと組んだ作品の予算費は日本での一般的なアニメ作品の数倍とも数十倍とも言われている。実際、『DEVILMAN crybaby』など、そういった経緯を経てつくられたヒット作はすでに出てきている。
この流れは今後どんどん加速していくだろう。「キネマ旬報」(キネマ旬報社)2019年4月下旬号でインタビューに応じているNetflixコンテンツ・アクイジション・ディレクターのジョン・ダーデリアン氏は、このように語る。
<日本の人たちは他の国の人たちと比べて、自国の番組を多く見る傾向がある。だから、日本では日本製のコンテンツを、他国よりも多く提供しているんだ。アニメに力を入れている理由の一つもそれだ。アニメは海外でも人気だしね。日本のアニメに投資すれば、日本だけでなく、海外の市場にも投資することになるんだ>
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