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政府にとって移民は政治的な「安全弁」にすぎない 古今東西、政府主導の移民政策が生む悲劇

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Getty Imagesより

 日本に在住する外国人が増え続けている。法務省が3月22日に公表した統計によると、2018年末時点の在留外国人数は273万1093人で、5年連続で過去最高を更新した。国籍別では中国が最も多く、次いで韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルとなっている。

 政府は4月1日、改正出入国管理法(入管法)を施行し、これまで原則禁止していた単純労働分野について外国人の受け入れに踏み切った。安倍政権は否定しているが、これは移民政策にあたるとの見方が広がっている。

 外国人の増加は人手不足の緩和につながる。一方で、宗教、言語、生活習慣の異なる人々との摩擦や軋轢を懸念する声もある。

 移民に伴う社会的な摩擦を最小限に抑えながら、日本側と外国人の双方が経済的なメリットを享受したいのであれば、ひとつポイントがある。どのような移民をどれくらい受け入れるかという判断を政府に任せるのは、やめたほうがよい。

ブラジル移民のルーツを辿る『その女、ジルバ』

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『その女、ジルバ(第1巻)』(小学館)

 移民問題を題材とする優れたマンガを読んでみよう。ただし、日本にやって来る外国人移民ではなく、海外に出て行く日本人移民の話だ。昨年完結した人気作、有間しのぶ『その女、ジルバ』(小学館、全5巻)である。

 笛吹新(うすい・あらた)は大手スーパーの倉庫で働く40歳独身女性。年齢を理由に最前線の売り場から追われ、結婚するはずだった男からも捨てられ、そのうえ給与は安い。恋人なし、貯金なし、老後のあてもない不安から少しでも逃れようと、夜のアルバイトに飛び込む。そこはホステスたちの平均年齢70歳の高齢バー。新は見習いホステス「アララ」として奮闘するうちに、人生について多くを学んでいく。

 このバーの初代ママ(故人)は通称ジルバ。幼い頃に親と一緒にブラジルに渡り、そこで育ったブラジル移民だ。現地で結婚し、子どもも生まれるが、第二次世界大戦の勃発で日本に引き揚げる途中、家族は病死。一人帰国した後、ブラジル仕込みのダンスで踊り子として身を立てた。

 今では忘れられかけているが、日本は明治初めから、戦後の高度成長期にかけて、多くの移民を海外に送り出す「移民大国」だった。戦前の1899(明治32)〜1937(昭和12)年だけでも累計64万1677人が海外に移住している(岡部牧夫『海を渡った日本人』)。

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