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『翔んで埼玉』も大ヒット、自虐路線でブランディング図る自治体PRはなぜウケるか

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『翔んで埼玉』公式サイトより

 サンドバッグのように埼玉県を殴り続ける映画『翔んで埼玉』が大ヒットしている。公開1カ月にして興行収入20億円・観客動員数150万人を突破し、早くも今年邦画№1の呼び声が高い。「埼玉県民から怒られない?」「炎上したりしない?」などの懸念もどこ吹く風。むしろ、この映画の熱心なウォッチャーは当の埼玉県民だったりする。

 大宮経済新聞によると、埼玉県内における同映画の観客動員数は約44万2000人(3月20日現在)で、全国1位を記録。東京都内の32万人を軽く上回る。さいたま新都心の映画館「MOVIXさいたま」では、公開直後の週末は終日満席、平日もほぼ満席だったという。『翔んで埼玉』は、ディスられた当人たちからもっとも熱い支持を得ている。

 原作漫画を手がけた魔夜峰央氏は連載当時初、埼玉県所沢市に居を構えていた。本作はいわば、作者が居住地を自虐的に描いたギャグマンガだ。横浜への転居をきっかけに連載は事実上終了を迎えるが、その理由について魔夜氏は、「埼玉県に住んでいなければただの悪口になってしまうから」と語っている。つまり『翔んで埼玉』は、自虐を売りにしてはじめて成立する作品なのだ。ただの悪口を吹聴する作品でないからこそ、地元民にも好評なのだろう。

徹底したディスりのオンパレード

 原作漫画は、「埼玉から東京へ行くには通行手形が必要」「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」などの過激なフレーズが飛び交う問題作である。何かと規制が多い映画化にあたって、少しはマイルドになるかと思いきや、その逆。さらにバージョンアップした“埼玉ディス”が繰り広げられる。

 上記で紹介した原作の有名なセリフに加え、映画ならではのオリジナルギャグも満載。埼玉県民かどうかを調べるために埼玉名物草加せんべいを「踏み絵」代わりに使うシーンなど、痛烈そのもの。そのほかにも、埼玉が誇る(?)ワースト記録「貧乳」「社長輩出率」「総理大臣輩出率」「夏/冬に行きたい都道府県」などの“証拠”を提示して埼玉がどれだけ落ちぶれているかを強調。これだけいじられても許せるのは、「埼玉県人は余裕があって懐が深い」(埼玉県上田知事)からだろう。

 映画のほうは埼玉だけでなく、千葉や茨城も同様にディスってバランスを取るなど、巧みな演出も光る。ディスりに関して中途半端な感がなく、その清々しさもまた受けた理由のひとつだろう。

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