『翔んで埼玉』も大ヒット、自虐路線でブランディング図る自治体PRはなぜウケるか

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自虐路線でブランディングを図る自治体

 ここ数年、自虐をネタにしたPR動画やキャッチコピーで活路を切り開く自治体が増えている。『翔んで埼玉』のヒットで埼玉県の認知度が上がった例を見てもわかる通り、自虐ユーモアには人々の関心を集め、魅力に映らせる“魔力”がある。

 自虐路線の口火を切ったのは島根県だ。同県発行の『自虐カレンダー』は全国から注文が殺到し、メディアにも取り上げられて話題になった。「元祖、過疎県」「駅、徒歩古墳」「日本で47番目に有名な県」「カーナビが静かだ」などのネガティブフレーズが、ユニークなキャラクターとともに掲載されている。ここ数年は鳥取県との『ダブル自虐カレンダー』も販売、書籍化もされるなど勢いは止まらない。

 ブランド総合研究所の「全国都道府県別魅力度ランキング」も、島根県は一時期46位から26位に急浮上。自虐カレンダーが一役買ったのは間違いない。

 香川県も負けていない。2011年、“うどん県”に改名すると発表した動画をホームページにアップし、話題を呼んだ。うどん県とはもともと、ネット上などで「香川にはうどんくらいしかない」と揶揄を込めて使われていた表現だが、香川県はこれを逆手に取った形だ。逆転の発想が見事にハマって香川県の認知度もアップし、観光客の増加につながっているという。

 関東では茨城県が奮闘する。2015年から始まった県の魅力を伝えるためのキャンペーンでは、『のびしろ日本一。いばらき県』というキャッチコピーが話題に。全国都道府県別魅力度ランキングでは調査開始以来、不動の5年連続最下位という汚名にも負けず、これから逆襲していくという静かな宣戦布告にも聞こえる。PR動画の中身は自虐的ながら、お笑い芸人や県出身のタレントを起用するなどして地味なイメージからの脱却を図る。

 これらのほかにも、フランス語かと思うほどひどい方言訛りをネタにする宮崎県小林市、「まいかたで覚えてもらっていいんで、住みに来てください」と開き直る大阪府枚方(ひらかた)市、大都市なのに地味な存在という残念感をコピーにした「おしい!広島県」の広島県など、数知れない。

 マイナス要素でも、伝え方を工夫することでその自治体ならではの個性のように伝わる。その思いきりの良さが好感を生むのだろう。これらのお国自虐には、従来のお国自慢にはない意外性がある。「香川のうどんは日本一」と自慢げに語るより、うどんしかないという自虐を込めて「うどん県」とするほうがキャッチ―だし、耳にも残りやすい。名を捨てて実を取る「自虐の勝利」といえるだろう。

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