社会

『翔んで埼玉』も大ヒット、自虐路線でブランディング図る自治体PRはなぜウケるか

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イギリス人は自虐を好む

 「自虐」を好む人は確かに少ない。その一方で、自虐は昔からユーモアの一ジャンルとして親しまれてきた。サラリーマン川柳などはその典型といえるだろう。

 イギリスでは、「自分を笑えるセンス」が問われる。自分の失敗やダメなところをネタに笑いを取るシーンなどは、日常会話でもよく見られる光景だ。イギリスにおける真のジェントルマンとは、自分を笑い飛ばせるほど余裕があってユーモアにも長けた人間のことを言うのだ。

 なぜイギリス人は自虐を好むのか? それは伝統と権威を重んじてきた歴史が深く関係する。伝統や王室などの権威は、立派なものであり、自慢するものだという意識がどこかにある。それに対するアンチテーゼとして、「自分を笑う=自虐」の文化が民衆の間で根づいた。個人が自分を笑うことで、自分たちを縛る規範と体制に抵抗する。イギリス式の自虐的な笑いは、社会風刺の色合いが濃い。

 都道府県の自虐路線も、似たような風刺の構造があると言えないだろうか? それまでの自治体PRといえば、伝統的な「お国自慢」のやり方が主流だった。もちろんそこに笑いの要素が入り込む余地はない。「ふるさと」という一種の伝統を盾に、自分たちの優れているところや自慢できる部分を主張するPR合戦に終始する。自虐ネタはその殻を完全に打ち破ったといえるだろう。この手法を権威である「首都東京」が真似しようと思ってもできない。あえて違う土俵で勝負することで、地方ならではのカラーも鮮明になる。

 今のところ、自虐ネタをPRに取り入れる自治体は、「島根県・鳥取県・香川県・広島県・宮崎県小林市・大阪府枚方市・茨城県・群馬県下仁田町・北海道夕張市」など“西高東低”といった印象。今回、『翔んで埼玉』のヒットをきっかけに、埼玉県やその近隣県が自虐合戦に参入すればさらに盛り上がるのではないだろうか、と期待する。

 スペインのとある大学の研究結果によると、自虐ネタには心身の健康を高める効果があるらしい。自虐的なユーモアを発する人ほど、幸福度が高くなるというのだ。このように、自虐も決して悪いことばかりではない。ふるさとに魅力がなければ、それをネタにPRするのもあり。ユーモアも根づいて、地元民の幸福度も高まるかも?

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