なぜ卒業すると勉強をやめてしまうのか 日本の生産性を引き下げる、学ばないビジネスパーソンたち

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日本の生産性が低いのは教育投資の少なさが原因?

 ここまで学習しない習慣が身についてしまっていると「時代が変化しているので、これからは生涯学習が必要だ」と言われたところで、何をどうすればよいのかわからないという人が大半だろう。

 もちろん諸外国でも学習しない人はそれなりにいるわけだが、日本の場合、いわゆる高偏差値の大学を卒業したエリートと呼ばれる人材でも、日常的な読書習慣がなく学習をほとんどしていない人が多い。日本では競争の結果としてリーダーを選抜するのではなく、大学の偏差値でリーダーになれるのかがほぼ自動的に決まってしまうので、これはかなり深刻な状況といってよいだろう。

 実は企業の生産性と教育投資には密接な関係があるといわれている。

 多くの国際比較調査において、人材に対する投資が活発であるほど生産性の伸びが高いという結果が得られている。しかしながら日本企業における人的資本への投資はむしろマイナスとなっている。労働経済白書によると2006年から2010年にかけて米国は平均で3%程度、ドイツは2%程度の人的資本投資の増加率があったが、日本はマイナス10%とむしろ教育投資を大きく減らしている。これでは諸外国との生産性格差が縮小しないのも当然である。

 さらに社員教育とIT投資にも関連性がある。

 現代社会では社員のスキルアップとITの活用はほぼセットになっていると考えたほうがよい。人的資本への投資が活発な国はたいていの場合、IT投資も活発で、国民のITスキルも高い。

 先ほど、日本の人的投資がマイナスという結果をご紹介したが、同じ期間におけるIT投資についても米国やドイツに遅れを取っている。社員のスキルアップが行われず、その結果としてビジネスへのIT活用が進まないという状況が総合的に作用することで、生産性が伸び悩んでいる様子がうかがえる。

ITを活用しなくても済むことをポジティブに認識

 国際的なIT調査会社ガートナーグループが主要7カ国で実施したITスキルに関する調査によると、自身のITスキルを「素人」あるいは「中程度」と考える日本人の割合は58%となっており、他国と比較すると突出して高い。日本人は自己評価を低くする傾向があるといわれるが、それでもこの数字はかなり際立っている。

 実際、日本社会においてITを活用する人の割合は少ない。OECDが行った調査では、職場や家庭において、ITを利用する頻度は20カ国中最低という結果が出ている。これはあらゆる年齢層に共通の傾向なので、世代間格差の問題ではない。ITを使う頻度が少なければ、自己評価が下がるのは当然であり、これが社会でのIT活用をさらに遅らせるという悪循環に陥っている。

 日本人は自己評価が低い傾向があるといわれているが、筆者はそれもかなり怪しいと感じている。

 このような比較調査の結果が発表されるたびに、「日本社会は利便性が高く、ITを使わなくてもほとんど目的を達成できる」「こうした結果は、むしろ日本社会のインフラ・レベルが高いことを象徴している」といった超ポジティブな意見が多数、出てくる。

 ITを使わなくても済むよう、多くの人がムダな時間や労力をかけており、生産性を著しく引き下げているにもかかわらず、これをすばらしいと賛美する風潮が強いわけだが、このような振る舞いは果たして自己評価が低いといってよいのだろうか。筆者にはそうは思えない。

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