ひたすら辛い更年期症状を和らげる治療法があるのに、なぜ普及しないのか

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HRTの問題点とは?

 HRTを始める前にはしかるべき検査を行い(詳細はこちら)、検査結果に特に問題がなければ、いざHRTスタートとなるわけなのだが……。

 実はHRTにはもうひとつ問題点がある。それは、現状ではHRTに積極的な婦人科医が多くないということだ。いやむしろ「HRTをやってみたい」「HRT治療中です」という患者に、「なんでやるんですか!? 乳がんになるのに!」「女性ホルモンは減少して当然、足すなんて不自然」などの言葉を投げる医師も少なくはない。

 この「乳がんになるのに!」発言は、おそらく過去に行われた大規模な臨床試験結果に原因があると推測される。だが、その結果についていまやあらゆる点が疑問視され、情報はアップデートされているということは前回も書いた。

 HRTを快く思わない医師はこの新しい情報を知らない可能性もあるし、「たとえ僅かでもリスクがあるものは許せない」などの反対理由があるだろうと推測される。

 そこで、実際にHRT治療を行う婦人科医に「HRTの現状」をうかがった。六本木にあるアヴェニューウィメンズクリニックの福山千代子院長である。

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アヴェニューウィメンズクリニック福山千代子院長
金沢医科大卒/日本産科婦人科学会専門医
【学会】日本産婦人科学会・女性心身学会

アヴェニューウィメンズクリニック
〒106-0032 東京都港区六本木7-14-7 六本木トリニティビル 4F

更年期をジッと寝て過ごすような時代ではない

――欧米での普及率は平均して約50%と言われるHRTですが、日本での普及率は約2%。なぜここまで普及しないのでしょう?

「まず、HRTという治療方法があることを知らない人が圧倒的に多い。聞いたことはあっても『ホルモンを入れるって、なんだか怖い』と感じて、情報をシャットアウトしてしまう女性もいるでしょう。

またHRTを良しとしない医師もいます。HRTスタート前の検診で乳腺外科に行った。そこでHRTの話をしたら担当医にイヤな顔をされてしまったため、HRTはよくないものだと不安感を覚えてしまい治療を中止した。そんな患者さんもいるようです。

HRTの治療中は、毎年一回の乳がん検診と子宮がん検診は必須。そのたびに検診を担当した医師からイヤな顔をされていては、患者さんもストレスですよね。今後は乳腺外科の先生と我々がもっと意思疎通を図るべきだとは思っています」

――私が通うクリニックでは、乳がん検診の際には先生が乳腺外科の先生に宛てて紹介状を書いてくれます。乳がん検診で診ていただく先生もHRTに理解があるため、嫌な思いはしたことはないのですが……。たしかにお医者様からネガティブなことを言われると不安になってしまうのはわかります。HRTって怖いものなのかな、って。

「私も、患者さんが乳がん検診を受ける際には必ず紹介状を書くようにしています。きちんと検診を受けていればHRTは必要以上に怖がるような治療ではないし、年に一度必ず検診を受けることで病気の早期発見にもつながります。とはいえ、HRTを嫌う先生方の気持ちはわからなくはなくて……。

特に女性特有のがんと闘う先生たちは、がんで苦しむ患者さんの顔を毎日見ているわけですから。たとえ僅かであってもリスキーなことはしてほしくない、そう願って当たり前です 」

――「女性ホルモンは加齢で減少して当たり前。それをわざわざ補充するのは不自然だ」という声も医師・患者共に多いように感じますが、先生はその点をどのようにお考えですか?

「平均寿命が短く、閉経してすぐに死を迎えていた時代なら、ホルモンをプラスする必要はなかったでしょう。でも、人生100年時代と言われる今。閉経しても、その先の人生はずっと長く続きます。

また、女性の生き方はここ何十年かで大きく変わりましたよね。出産年齢が高齢化し、いまの更年期世代はお子さんがまだ小中学生で手がかかるという方がたくさんいらっしゃいます。社会進出も進み、キャリアの面でも非常に重要なポストに就かれている方も多い。親御さんの介護で大変だという人も、再婚して新しい生活をスタートする人もいる。更年期から抜けるのを家で寝込んでじっと待つ、とはいかないと思うんです」

――まさにおっしゃる通りで、いまや更年期世代の生き方はほんとうに多種多様になってきています。

「女性のライフステージは大きく変わり、寿命も長くなりました。50歳でおばあちゃんと呼ばれていた時代といまでは、あらゆることが違ってきています。更年期世代である45歳から55歳はやるべきことが山積みで、寝込んだりへたばっている暇はないんですよね。だから私は更年期の辛い症状を改善するひとつの選択肢としてHRTという治療があることを、ひとりでも多くの人に知ってほしい。

更年期について軽く考えるドクターも多いですが、この期間をどう過ごすかで今後の人生が大きく変わることもある。『更年期は我慢するもの』で片付けずに、きちんと向き合うドクターが今後ひとりでも増えてくれればいいなと思うのですが……」

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