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「そのままでいい」人なんて本当にいる? 美談を疑う子どもたちへ/ヨシタケシンスケさんインタビュー

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ヨシタケシンスケさん

 3月29日、これまで手帳に描いたスケッチをまとめたイラストエッセイ『思わず考えちゃう』(新潮社)を上梓したベストセラー絵本作家のヨシタケシンスケ氏。

 彼が数十年間毎日、”思わず考えてしまう”のには、意外な原動力があった。「自分はマイノリティかもしれない」という自覚がある人は、必見です。

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ヨシタケシンスケ
1973年神奈川県生まれ。絵本デビュー作『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、『りゆうがあります』(PHP研究所)で第8回同賞第1位、『もうぬげない』(ブロンズ新社)で第9回同賞第1位、『なつみはなんにでもなれる』(PHP研究所)で第10回同賞第1位、「おしっこちょっぴりもれたろう」(PHP研究所)で第11回同賞第1位受賞の5冠に輝く。

美談や理想をつい疑ってしまう3~4割の人

――前編の冒頭で「美談にしたくない」とおっしゃっていましたが、その感覚はヨシタケさんの本全体に通じていると思います。母と子の絆、みたいな美談は書かれないですよね。

ヨシタケ:なぜ美談にしたくないかというと、僕自身が小さいころから、美談を聞いてイラっとするタイプだったからです。

 世の中には美談が重宝され溢れていますが、それは美談を聞いて感動したり勇気をもらう人の数が多いからですよね。「あなたは世界にひとりだけなの。だからすごいのよ」という“いい話”を聞いて、「そうだよ! 私は世界にひとりしかいないんだから、頑張らなきゃ!」と思う人が全体の6~7割いるとすると、残り3~4割は「んなわけねえじゃん」と、イラっとしているはずなんですよ。僕は小さいころか今までずっと、その3~4割側の人間でした。

 僕は絵本を小さい頃の自分に向けて描いているので、当時の自分がイラっとすることは描きたくないし、言いたくないんですよ。美談を語るよりも、美談をつい疑ってしまう3~4割の人に対して、「そんなうまいこといくわけないよな」ってことを、ちゃんと言いたいんです。

 理想だけを語るのは楽だし、言う方も気持ちいいんでしょうけど、美談を語られれば語られるほど、聞いているこちらは現実とのギャップが生じます。「なぜ自分はうまくできないんだろう」と思い悩んでしまう。そこで僕は、「とはいえ、みんな結構できていないんだよ」というところを、ちゃんと拾いたい。

 そう言われることで、何より昔の僕自身が楽になれただろうし、同じような人に言っていきたいという気持ちが、ずっとあります。

――美談本にありがちな、説教臭さがないのもヨシタケさんの本の魅力のひとつです。

ヨシタケ:僕自身が説教くさい絵本が嫌いでしたからね。子どもって、説教くさい本って、2、3ページ目で気づくじゃないですか。「これ、つまんない本だ」って、佇まいでわかっちゃう。大人側の意図が透けて見えると興ざめしますよね。

 もちろんそれはそれで世の中に必要な本ですが、僕としては楽しみたいと思って絵本を手に取るわけじゃないですか。そんな小さい頃の自分をがっかりさせたくないんですよね。

 それに、子どもは世界一飽きっぽい生き物なので、よほどのことがないと次のページをめくらないんですよね。次のページをめくるまでに、「もうちょっと読んであげてもいいかな」と思ってもらえるような仕掛けをしていきたいと思っています。

――具体的には、どんな本でイラっとしていたんですか?

ヨシタケ:後半にいくにつれ上から目線になってゆき、「というわけで、あなたは明日から自分の生活を改めましょう」という感じになり、「じゃあどう改めたいと思いますか? 書き出しましょう」と、最後にメモ書きできるページがあるような本ですかね。そんなの全然楽しくないじゃないですか。

 だから僕は、「子どもの頃の自分は、どんな言い方をされたら納得できただろうか。イラっとせず、最後まで楽しめて興味を持って読んでくれるのか」を、一生懸命考えています。

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