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「そのままでいい」人なんて本当にいる? 美談を疑う子どもたちへ/ヨシタケシンスケさんインタビュー

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「そのままでいいんだよ」の誤解

――ヨシタケさんご自身が子どもの頃から疑り深い、ということは、当時から想像力が豊かだったんでしょうか。

ヨシタケ:決してそんなことはないです。怒られるのが嫌いで、人一倍、“常識”や“普通”を意識する子どもでした。「こんなことをしちゃダメなんじゃないか」「本当はこうするのが正解なんじゃないのか」「変なことをしないほうが、人を不安にさせないんじゃないか」などいつも考えているような、人の目を気にする自己肯定感が低い子ども、とも言えますね。それは今でもそうですが。

 そうやって誰よりも“常識”を気にしていたからこそ、「じゃあ何をすると常識から外れるんだろう」という発想ができるので、今、すごく役に立っていますね。

 当時の僕は不安だらけでしたが、「大丈夫。みんなてきとうだから」と、小さいころの自分や、同じように一定数いる子どもに、本が届けばいいな、と思います。

――「大丈夫だよ。きみはそのままで」というメッセージ……と言うと、またなんだか違う気がしますね……。

ヨシタケ:そう!「きみはそのままでいいんだよ」というのとは、また違うんですよ。だってそんなわけないじゃないですか。「そのままでいい」人なんて、滅多にいませんよ。

 そうやってすごく簡単に人を許してしまうのって、罪深い行為だなと思います。

 それに、そういう伝え方って、本当に難しい。本当に気を病んでいる人に、「あなたはそのままでいいから」と言っても、「いや、そんなはずはない」となるだろうし、対照的にだらしがない人に限って、「おお、俺ってこのままでいいんだ。ラッキー」となりそう。「いや、ホッとしていいのはおまえじゃないから! おまえがその救いを持っていくな! 違うから!」って(笑)。

 どんな言葉を使えば、届いて欲しくない人に届かずに、届いてほしい人に届くのか。難しいですね。

 わかりやすい言葉ほど、使い回しが効くし美談になりやすいから、誤解されるし、救われちゃいけない人が真っ先に救われちゃう。その現象にさらにイラっとするわけです。

「そのままでいいんだよ」を、もっとこう……誤解を省いた言い方はないのかな……。

――『結局できずじまい』というエッセイを書いていらっしゃいますが、そこに、大人になっても“できないこと”を大事にするこだわりが描かれているようで、「そのままでいいんだよ」の言い換えになっている気がします。

ヨシタケ:そうかもしれないですね。で、なぜ僕はこんなことを常に考えているかというと、僕自身が「そのままでいいんだよ」と、言ってほしくてしょうがないからです(笑)。「できてない自分」を肯定してほしいから。

 本を読むときも映画を観るときも、自分を肯定してもらえる一文を必死に探していますが、そうそう見つからないんですよね。だから、自主開発している感覚がありますね(笑)。

 人間に“係”があるとすれば、僕はその言葉を一生懸命探す係なんだろうなと思います。でも僕じゃなくとも、いい形で説得してくれる言葉があるなら、その人にその係をお任せしたいですね。

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