叶姉妹の「謎」はすでに解かれていた セレブライフの入り口と半生

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叶恭子という人生

 まずは2000年(ミレニアム、懐かしい)に発行された恭子さんの自叙伝と言うべき一冊。第5章~7章にかけて、年老いた石油王との見合い相手として選ばれた経緯がつづられているが、彼女自身が「これはまさに映画の世界だ、と思いました。映画のシナリオにしても、ちょっとできすぎていて、むしろ陳腐という感じがするほどです」と述懐するほど、その部分は幻想的なストーリーになっている。

 ここに登場する彼女の家族は、「輸入会社」を経営する父親と、あまり家事をしない母親、妹の晴栄さん。父はよそに家庭をいくつも持っているプレイボーイで、あちこちで妾を囲って子供ももうけている。戸籍上では、7人の子供を認知しているが、他にももっといるのではないかと親戚たちは話しているという。美香さんもそのうちの一人で、いわゆる異母姉妹だと記されている。

子供心に、「なぜうちのお父さんは他にも家があるの?」「男の人は、なぜそういうことをするの?」と疑問に思い、やがて「それが男性の習性なのだ」と諦めるようになっていったという恭子さん。

 遠足に吉兆の三段重を持たせて白いリンカーン・コンチネンタルで送迎するほど経済的に余裕のある家庭だったそうだが、小学校は公立だったのか、恭子さんは好奇に満ちた視線にさらされ孤独を味わったという。その後、彼女が10代後半になり家を出たころに父親の会社が倒産。両親は離婚している。

恭子さんに数億円の現金を貢いだ男の存在

 学校で「規則」に縛られることに息苦しさを覚えた恭子さんは、高校時代から大阪のクラブに通う夜遊びを楽しむようになった。そして高校三年生の時に出会った、「秋田犬のような純朴さ」を持つ27歳の実業家男性と恋をする(後に、この男は実は30歳で子持ちだったと判明して恭子さんを失望させるのだが)。

 クラブでナンパしてきたこの男は、資産家だった父の遺産を相続して金には一切困っていないとのことで、会うたびに高級ブランドの品をプレゼントしてくれた。何百万もする高価な品物だが、いかんせん趣味が悪く、恭子さんはそれを身に着けることはできない。そこで、「気持ちは嬉しいけど、せっかくもらっても私は使わない。やめてほしい」と率直に告げたところ、男はなんと使い古した紙袋に一千万円の札束を入れてよこしたという。

 裕福な家庭で育った恭子さんでも、一千万円の塊を見たのはその時が初めて。その後も、男はたびたび現金をプレゼントしてくれ、たいていは一千万円(この塊を1ブロックと呼ぶそう)だったが、使いきらないうちにまた現金をプレゼントされるので、「どんなに高価な物を買ったところで使っても使っても減らない」状態に。恭子さんは一人暮らしの部屋で段ボール箱にその塊をキープした。一度に五千万円を受け取ったこともある。男は彼女をつなぎとめるために、湯水のように現金を渡し続けたという。彼女の部屋には現金の束が積み上げられ、まさに「マネー・トゥリー」状態だった。

 彼女は、『hon-nin』(太田出版)のインタビューで、辛酸なめ子に「恭子さんのように、無邪気にお金で遊べるようになるにはどうすればいいのか」と尋ねられ、「たくさんのお金をたくさんいただく経験が必要」と明言している。まさにこの、総計数億円はくだらないだろうと思われる現金を貢がれた経験が、その後の彼女の人生を大きく変えたと言っていいのかもしれない。

 さて、男とそんな関係が四年間続き、ある時、恭子さんは「彼が年齢を3つごまかしている。別の女性との間に子供もいる」という事実を知らされる。これで二人は恋愛関係にピリオドを打つことになるのだが、男は最後まで「僕を捨てないでくれ」「君を知ったらもう、普通の女の人を愛することができなくなってしまった」とすがった。

 この男が貢ぎ続けた金塊が資金となって、恭子さんは「自分で会社を興し、ビジネスをしてみよう」と考え、個人事務所を設立する。なぜそんなにいい暮らしができるのか、と問われた時に、「彼がとてつもなくお金持ちで」と素直に話したところで、誰も信用してくれないだろうと思ったからだ。その後、宝石・貴金属・時計を並行輸入する会社を設立。バブル好景気の影響もあり、「年商10億円を超える優良企業に成長」したという。また、彼女は株取引の手腕にも長けていた。男に貢がれた現金をただ蓄えておくのではなく、殖やしていった……というわけである。

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