
「Getty Images」より
3月20日午後3時20分ごろ、東京都千代田区霞が関にある東京家庭裁判所の1階建物内で「女性が首を刺された」と110番通報があった。警視庁によると、女性は首付近を刃物で刺され、心肺停止の状態で病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。警視庁は、女性の夫で、32歳の米国籍の男を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。
死亡した女性は31歳で、逮捕された夫とは離婚調停中だった。女性は協議のために家裁を訪れたところだったという。裁判所の玄関には危険物などの持ち込みを防ぐためにゲート式の金属探知機などが設置され、荷物検査も行われているが、夫はゲート前で妻を待ち伏せていたとみられる。
夫は日比谷公園で現行犯逮捕されたが、逃げながら凶器を捨てたとみられる。逮捕時、夫のバッグにはバタフライナイフなど少なくとも3本の刃物が入っていた。また自分の両手首を切って怪我をしており、逮捕後にいったん釈放され、入院した。
夫はFacebookに「息子が誘拐された」
のちの報道で女性は昨年8月、警視庁に「夫が精神的に不安定」だと相談していたことがわかった。夫はSNSアカウントを所有しており、そこに昨年9月以降「妻と息子が姿を消した」「息子は誘拐された」などと投稿を繰り返していた。Facebookには夫と幼い息子との写真がアップされており、2014年に結婚したことなどがわかるが、昨年9月21日には「私の息子は8月30日に誘拐された」「彼は2歳です」「私の妻も行方不明です」などと投稿している。
離婚をめぐる裁判所での殺傷事件はこれまでにもあり、2016年には、60代の女性の頬を刺したとして69歳の男が逮捕された。ふたりは元夫婦で、元夫はさいたま家裁に離婚無効訴訟を起こしており、この日は手続きのために来庁していた。
争い合う当事者らが赴く裁判所では、強い恨みを抱いた一方によるこうした加害行為もおこりうる。ここ数年で全国的に裁判所の出入り口では荷物検査や金属探知機のゲートなどが設置され、危険物の持ち込みが禁止されるようになったが、東京家裁の事件では、その検査場の手前の建物内で夫が加害行為に及んでいる。金属探知機を設置することでトラブル防止は望めないのではないかという声もある。
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