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熟成肉の次は「熟成魚」! 食材腐らずに旨み増進する「エイジングシート」開発秘話

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「エイジングシートが完成した頃には、すでに熟成肉のブームがピークに達していたんです。お金をかけて安心・安全な熟成肉を作ろうというよりは、『とりあえず寝かせりゃ熟成肉ができるんだろ』みたいな風潮になっていたんですよね(笑)。ですからエイジングシートの需要は見えづらかったですし、もはや必要はないのではないかと思ってしまった時期もあります。

 しかし、コンサルタントからの提案を受けて、2017年にエイジングシートの記者会見を開く運びになりました。それに合わせて、ハンバーガーチェーンの『ファーストキッチン』や『中日本エクシス』のパーキングエリアで熟成肉を使ったメニューを提供したところ、とても評判がよく、その他の大手企業にも受け入れてもらえるようになったのです」(跡部氏)

エイジングシート活用で、獲れすぎて余ってしまった魚も救済!?

 では、肉だけでなく、魚にもエイジングシートを用いるという発想の転換には、どのような背景があったのだろうか?

「実をいいますと……『肉が熟成できるなら魚だって熟成できるんじゃないか』という単純な思いつきのもとで、遊びで実験してみたら本当にできてしまったというだけなのです(笑)。当初は味がイマイチな熟成魚しか作れなかったものの、試行錯誤しているうちにクオリティが上がってきて、今では確実においしいものを仕上げられるようになってきました。

 “旨味”の生成に欠かせないイノシン酸やグルタミン酸などのエビデンスデータはまだ計測途中なのですが、通常の魚だと2~3日経ったら酸化臭がしてしまうのに対し、熟成魚にはそのような魚臭さがありません。ほかには変色しづらくなったり、冷凍焼けしづらくなったりといったメリットも挙げられます。

 また、風邪のウイルスが粘膜からしか入らないのと同じ考え方で、熟成に使うヘリコスチラム菌は、魚の傷口からしか入りません。たとえばブリを熟成させる際は、腹を裂いて内臓を取り出し、その中にエイジングシートを貼るだけで済みます。手間としては、シートを貼る前に部位をトリミングしなければいけない熟成肉よりも、熟成魚のほうが楽なのではないでしょうか」(跡部氏)

 こうして完成した熟成魚には、評判も上々のようだ。

「立ち食い寿司専門店の『本格江戸前寿司 魚がし日本一』などのブランドを運営するにっぱん社が提供している熟成魚には、非常に反響が大きいようです。とくに熟成させたマグロは、従来のものとの違いが目に見えて分かるんです。これもまだ充分なデータが取れていないのでハッキリとは申し上げられませんが、マグロやサーモンのように脂が多い魚は熟成するのに向いているようで、エイジングシートを使用すると脂の口溶けがよくなり、舌に乗せて一口、二口と咀嚼していくほどに甘味を感じることができます。普通でしたらこんな現象はあり得ませんし、熟成魚ならではの味わいが楽しめるというわけです」(跡部氏)

さらに話を聞いていくと、エイジングシートにはまだまだ未知の可能性が秘められているようである。

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