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母体はボロボロで赤ちゃんは低体重児として生まれてくる。多胎育児がいかに困難か、まずは知ってほしい

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NPO法人ぎふ多胎ネット理事長 糸井川誠子
特定非営利活動法人ぎふ多胎ネットは岐阜県内とその周辺市町村において双子・三つ子など多胎家庭を支援。2019年4月現在、活動者数はコーディネーター21人、ピアサポーター57人、計78人。糸井川氏自身も三つ子の母。

糸井川氏「調査結果からも明らかなように、多胎妊婦は切迫早産になりやすく、妊娠30週を越えると入院になることが多いのです。4~6週の寝たきり生活で体力も筋力も無くなった状態での出産となり、母体の回復も遅れます。回復しない体で2人以上の乳児の世話という過酷な状況。しかも、赤ちゃんたちは低体重で産まれた育てにくい子です。低体重で早産で産まれた赤ちゃんは力がなく、哺乳力が弱く、授乳させてもすぐに疲れて寝てしまいます。ですから飲みが悪く、授乳が頻回になります」

 ぎふ多胎ネットが聞き取り調査を実施したところ、多胎児を出産した母親は退院後、双子の場合は1日で約20回、三つ子の場合は1日で約30回の授乳を行っていたという。

糸井川氏「これはお母さんたちの『小さく産まれたから、なんとかたくさん飲んで早く大きくなってほしい』という気持ちの表れもあると思いますが、この授乳に加え、同じ回数のゲップ出し、同じ回数のオムツ替え、同じ回数の寝かしつけをするのだから大変です」

 赤ちゃんは放っておけば自動的に寝ている、というわけではない。授乳を終え、ゲップを出させ、親が寝かしつけるのだ。当然、すぐに寝てもくれない。グズグズ泣いたりもする。

糸井川氏「お風呂入れ、2人以上の乳児の衣服や下着やタオルなどの洗濯、哺乳瓶などの大量の洗い物、オムツやミルクなどの買い物、オムツやミルクのゴミの処理……。赤ちゃんのことだけでも、これだけやることがあります」

 一人を育てるだけでも大変なことだが、多胎児の多くは低体重で生まれてくる。

糸井川氏「ゲップを出すにも、低体重児は腹筋や背筋が弱いので30分以上抱っこしないと出ないこともあります。ゲップを出させたら今度は寝かしつけますが、すぐには寝てくれません。また、低体重児は胃がきちんと締まっていないのでミルクの吐き戻しや垂れ戻しが多く、1日に何度も着替えます。これに家事や自分の食事や入浴など必要最低限の生活時間が加わると24時間で足りるはずはなく、誰かの助けや何らかの支援がなければ生活は破綻します」

 多くの家庭において、これらをメインで行うのは、多胎児を出産し、体力や筋力が低下した状態の母親だ。

糸井川氏「圧倒的な育児量から慢性的な睡眠不足になる多胎育児を、母体の回復の悪いヘロヘロの母親がやるのですから、想像を絶する負担と疲労です。しかも、その労働を初めて行うわけですから、この難業を不安の中で手探りでやっていくわけです。ある母親は『まるで無人島で1人で育児しているみたい』と言ったことがあります。その難業には、外出困難と『単胎児の子育てとの違いによる疎外感』も加わって孤独でもあるのです」

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