たとえ名誉男性でも、女性を増やすことには意味がある
――あいちトリエンナーレ2019が無事に終わったら、津田さんは次の芸術監督を選出する有識者会議の出席者になります。
津田「あいちトリエンナーレ2022が開催されることが決まったら、僕も選出会議のメンバーになりますね。歴代の監督みんななっているので、順当に行けば僕もなるわけです。そうしたら僕はその会議では、『2022の芸術監督は女性にしてください。2010から4回連続男だったので、2022からは4回連続女性にするべきです』、それしか言わないつもりです」
――それで選出される女性が名誉男性だったら、という問題についてはどうお考えですか?
津田「その問題って僕は結構、本質的な問いだと思っていて。日本の国会議員なんてそうじゃないですか、いわゆる“名誉男性”みたいな議員がとりわけ与党には多いですが、だけれども、そんな女性議員であっても、数が増えれば状況は変わりますよ。いまの与党にいる名誉男性的な女性議員だって、ジェンダーとして許せないことには声を挙げたりしてますからね。間違いなく変わりますよ。だから、イデオロギーは置いておいて、まず女性を社会決定の場に増やすことが必要だと思います」
――とにかく決定権を持つ女性の量を増やしていくことですね。
津田「ちょうどいま平成が終わるじゃないですか。30年前の平成元年って、欧米もこんなにジェンダーギャップが縮まっていなかった。要するに30年前はアメリカ、ヨーロッパ、北欧ですら、圧倒的男性優位の男性中心社会だったんです。この30年で変わったんですよ、世界は。世界は変わったのに日本だけが昭和の終わりのまま立ち止まっている、っていう状況なんですね。
ともかく、30年遅れをとっているけれど、でも少しずつ変えていくしかなくて、変えるためには誰かが動かなくちゃいけない。この動きに追従する芸術祭が他にあってもいいし、別に美術業界以外で、ちゃんと質と量を担保できるところが、ジェンダー平等していきますってなってもいい。まずあいちトリエンナーレ2019を成功させて、追従しようという機運を作りたいですよね」
――何をもって「成功」って評価できるのでしょう?
津田「来場者数が増えたとか減ったとか気にするのはくだらないですよね。そんなことより、どれだけ将来の大作家が世に出るきっかけをつくれたか、とか見に来てくれた人の満足度の高さとか、愛知県以外でも多く話題にしてもらったとか、そういうことを評価軸にしていってもらいたいなと思います。
来場者数より、このイベントによってどれだけ人々が活性化するか、世の中で話題になるのか、注目が集まるのかっていうことを突き詰めていきたいと思っています」
託児所完備、子連れ歓迎! 子供も楽しめる芸術祭に
津田さんの話を聞き、また、招聘されたアーティストの顔ぶれを見て、筆者も8月から10月の開催期間、是非あいちトリエンナーレ2019に足を運びたいと思った。しかし小学校低学年の子供がおり、子連れで展示を回ることのハードルの高さを感じている。そう告げると、津田さんは「託児機能を充実させる予定で進めているので是非!」とすすめてくれた。
今回の会場は、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか(四間道・円頓寺地区)、豊田市美術館と豊田市のまちなかだ。美術館内では同行者と作品について喋ることも憚られる雰囲気があることも懸念しているが、「海外の美術館では、みんな語り合っている。大騒ぎするのでなければ全然喋っていいはずだ」と津田さん。子連れ世代にも遠慮なく来場してもらうことが、今回のコンセプトにも合致するという。
あいちトリエンナーレ2019では、各作品に中高生でもわかる説明書きをつける。子どもや一般を対象としたツアー形式による展示作品の案内(ガイドツアー)も予定。来場者の創造性をテーマに、体を動かして遊べるアート・プレイグラウンドも会場ごとに設置する。
たとえば愛知芸術文化センターでは、建築家の遠藤幹子、各地で一般参加者とその地域の特性を生かしたワークショップを多く行ってきた日比野克彦が参加し、子供達の創造性を刺激する公園(に見立てた小さな社会)が用意され、来場者の相互的な学びの場を提供する。
ちなみに、作家陣には妊娠中や子育て中の女性作家も数多く参加しているそうだ。美術界にもあからさまな女性のM字曲線問題があり、「そういう作家たちがどれだけハンデを背負わされてきたのか」と津田さんは言う。
※音楽プログラム(サカナクション及び純烈の公演)/パフォーミングアーツのチケットは別途、6月以降順次発売予定です。
ボランティア二次募集
あいちトリエンナーレ2019では、ボランティアを募集している。事前の活動研修も充実。詳しくはこちらから。http://aichitriennale.jp/volunteer/
寄付募集中
あいちトリエンナーレ2019では、寄付をクラウドファンディングのサイトで募集中だ。津田さんによれば「男女平等を実現するために作家数が増えて制作予算が全体的に足りなくなっている。女性のエンパワーに使いたいので、もしこの取り組みに共感する人がいたら寄付をしてほしい。寄付控除も受けられますよ!」とのことだ。
詳しくはこちらから。https://culfun.mecenat.or.jp/project/fund/detail/2074