
(左)松屋/(中)吉野家/(右)すき家(画像は「Wikipedia」より)
大手牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスが2月、2018年度第3四半期(18年4~12月)決算を発表した。それによれば、売上高は前年同期比4.4%増 の4548億円、営業利益は同7.2%増の146億円。また既存店売上高でも、前年同期比3.3%増だったとのことで、その好調ぶりが明らかになった。
一方で、苦しい状況が露わになったのが、「吉野家」を手掛ける吉野家ホールディングスだ。1月に公表した2018年度第3四半期(18年3月~11月)決算によれば、売上高では前年同期比2.4%増の1500億円と増収だったものの、前期は25億円の黒字だった営業利益で、5.6億円の赤字に転落してしまったという。
では、もうひとつの牛丼チェーン大手「松屋」を運営する松屋フーズホールディングスはどうか。2月に発表した2019年3月期第3四半期(18年4~12月)決算によれば、売上高は732億(前年同期比5.2%増)、営業利益は30億(前年同期比12.3%減)。「吉野家」と比べれば悪い業績ではないものの、そもそもの売上高で、他の2社から大きく水をあけられているというのが現状だ。
「すき家」「吉野家」「松屋」の3社は“牛丼御三家”とも呼ばれ、かつては三国志ばりの戦いを繰り広げていたはずだが、今ではその明暗がハッキリと分かれているようである。
……とはいえ、熱心な牛丼マニアでもなければ、どこも低価格で牛丼を提供するチェーン店として、なぜここまで売上や利益に差が出てしまうのか、サッパリ分からないという人もあるかも知れない。
そこで、フードアナリスト協会所属のフードアナリスト・重盛高雄氏に、牛丼チェーン大手三社の比較を依頼。各社の分析を通じて、牛丼業界の未来を読み解いてもらった。
「松屋」は定食類好調、客層も拡大
まずは「すき家」好調の理由と、「松屋」の業績の評価について解説してもらおう。
「他社と比較して、来店客数が多い『すき家』は、何度も足を運んでくれるような固定ファン層をしっかりと掴んでいることが好調の要因でしょう。牛丼だけでも9種類、またカレーも8種類(一部店舗や期間限定メニューも含)と、専門店並みの豊富な商品ラインナップを揃えていることがファン獲得に一役買っていると思います。また、単価の安く気軽に付け足しやすい『おしんこ』『高菜明太マヨ』『かつぶしオクラ』などのサイドメニューも充実しており、客単価の向上につながっています。
一方で『松屋』は、年度前半は客数が物足りない印象でしたが、後半からグッと客足を伸ばしました。また、牛丼よりも高価格な『牛焼肉定食』や『豚肩ロースの豚焼肉定食』などの定食類が好調で、年間を通して売上高が前年比100%を超えるなど、客単価が比較的高めに維持されているのです。
『松屋』は他社と比べても店舗環境はきれいですし、QRコードなどの支払い手段の多様化にもいち早く対応してきました。また、券売機が多言語化されていることで、海外からの利用者にも対応しています。多様な客層から選ばれたことで、客数を伸ばせたのではないでしょうか」(重盛氏)