「吉野家」は沈み行く船か 「すき家」「松屋」牛丼御三家の業界見取り図

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 では、一時期は牛丼チェーン界のチャンピオンだった「吉野家」が、ここまで苦しんでいる理由はどこにあるのだろうか。

「『吉野家』の不調は、商品戦略の迷走が一番の原因ではないでしょうか。今年3月にはおよそ28年ぶりに新サイズの牛丼『超特盛』(780円)を投入しましたが、夜に来店するサラリーマンを実際に見ていても、鍋系の商品を注文する人はいますが、『超特盛』を頼む人はかなり少ない印象です。また、じつは『並盛』(380円)を2杯頼んだ方がおトクという不可思議な料金体系となっており、狙いが不明瞭なのです。

 また、著しいファン離れを起こしてしまったのが、ソフトバンクとのコラボ企画でした。昨年には、ソフトバンクユーザー限定で牛丼並盛を無料提供するというキャンペーンを行った日に、多くのユーザーが店先に長蛇の列を成したことで、大混乱を引き起こしました。その反省から、今年になってキャンペーンが行われた際には、一部店舗で警備員を雇うなどして対応していましたが、店内では無料客の導線が優先されており、お金を払って食べに来るファンを軽視するような姿勢が見られました。

 『吉野家』は、新商品や商品展開が他社と比べて弱く、また昨年12月からは「吉野家プリカ」という自社の電子マネーによる決済を始めたことも、ファンのニーズを汲んだサービスとは言えませんでした。迷走状態を続けていることで、ファンの失望を買っているのです。

 『吉野家』は長年、女性客を増やす取り組みも行っていますが……なかなか成果は上がっていません。もはや、女性専用の実験店舗を作ってみるなど思い切ったテコ入れ策が必要となってきているのではないでしょうか」(重盛氏)

「吉野家」は“沈みゆく船”なのか

 では、この先の牛丼業界で覇権を握るのはどのチェーン店なのか。ズバリ、予想していただいた。

「順当すぎて面白くないかもしれませんが……本命は『すき家』でしょう。店舗の看板には、『牛丼』と『カレー』の文字が躍っていますが、まさに、その二つが看板商品になっているのも強みです。ゼンショーは、牛丼のみならず、親子丼やうどんの『なか卯』をはじめ、ハンバーグの『COCO’S』、回転寿司の『はま寿司』など、外食事業で多くのブランドを展開しており、ノウハウを活かしてさまざまな挑戦ができるのもメリットのひとつとなっています。

 ただし、商品サイクルが短いことは、ウィークポイントにもなりかねないと思います。コンビニのように売れ筋とそうでない商品の見極めがスピーディーで、商品を入れ替えるタイミングがとにかく早い。商品をじっくりと煮詰めてから世に出していく、というスタイルではなく、“とりあえず出す”ということが企業コンセプトになっている印象です。客を飽きさせないという気概は感じられますが、固定メニューのファンが根付かないといったリスクにもなり得るでしょう。

 一方の『松屋』は、ゼンショーと同じスタイルを目指し、牛丼という“垂直的”な幅でブランド展開をするのではなく、“水平的”な展開をしていくのではないでしょうか。『松屋』はすでにとんかつチェーンの『松乃屋』や、中華料理チェーンの『松軒中華食堂』へ挑戦しており、今後はさらに横方向へのさらなる事業展開が予想されます」(重盛氏)

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