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自分が何者かを定義しないスウェーデンの男女共用トイレに考えさせられた話

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トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

 3月末にスウェーデンを旅する機会があった。友人からお土産に頼まれたのは、トイレの写真だ。「あなたが好きなトイレがたくさんあるから、たくさん撮ってきてね!」。それで、写真を撮ってみた。ストックホルム市内の駅のトイレ。小学校のトイレ。高校のトイレ。それぞれ男女共用の個室タイプで、中に手洗い機能がついているものだった。いくつか例外はあったが、スウェーデンのトイレは基本的に男女共用であるらしい。

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 駅の通路に、おもむろに並んでいる個室トイレ1、2、3。あるいは学校の廊下に思い出したように散発的に登場するトイレAというスタイルは、それぞれ通路からいきなり個室に入れるため死角がない。日本だと死角となった共用手洗い場で知らない人と顔をはちあわせるのがストレスだったが、それもない。駅では駅員に頼んでカギをもらい、ショッピングモールのトイレには入り口にスタッフがいるシステムで、それぞれ利用は有料だった。超福祉国家のスウェーデンでは幼児教育から大学まで授業は無料だし、医療も全部タダなのに、なぜかトイレだけは基本有料なのだから謎である。スウェーデンではキャッスレス化が進んでおり、だれも現金を持ち歩いていないので、用を足すのにみんな財布からクレジットカードを取り出す羽目になる。クレジットカードをつかって、ようやくトイレの個室に入れる仕組みなら、きっと盗撮などの犯罪をするリスクも減るだろう。なるほど、こういう考え方もあるんだな。

 スウェーデンには教育機関の視察に訪れたのだが、どこの学校もトイレは前述のとおりで、制服も存在せず、私がふだん接している日本のトランスジェンダーの生徒たちが悩んでいることの7割以上がそもそも問題とならないように思われた。高校の教師に現状の課題について尋ねたところ「必修になっている体育の授業の着替えかな」と言う。着替えは男女別の部屋しかないのか、と早合点したところ、そうではなく「先生に申請しないと第3の選択肢である個室が使えない」ことが問題らしい。「自分が何者かを定義しないとアクセスできない服装やトイレ、着替えの部屋はストレスだ。定義させること自体が負担だから」と先生は話していた。あぁ、日本の先生で、このような視点を持っている人がどれだけいるだろうか。若干気が遠くなった。

 トランスジェンダーが使いやすいトイレについて、日本ではここ最近いろいろな議論がされている。日本のトイレは男女別であることが基本で、その前提は変えない上で、マイノリティ向けの特別メニューを追加すればいいんでしょ、と考える人もいる。性別を問わないトイレをメディアが「LGBTトイレ」と称したときには、用をたすのにカミングアウトをしなきゃ使えないみたいだと当事者から失笑を買った。どんなトイレのマークがいいか、レインボーマークをつけたらどうか、なんて議論もある。

 でも、スウェーデン式でいけるなら、それがシンプルでいいんじゃないかと思う。トイレ1、トイレ2、トイレ3。あるいは、大通りに面したトイレAだ。

 男女別のトイレが使いにくいのは性的少数者だけではなく、幼い娘をつれた父親や、障害者と異性の介助者も同じで、実は男女共用トイレを必要としている人たちは多様であるとも言われる。このような共用トイレのマークについて、私はやっぱり「トイレ」「WC」といいのではないかと思う。いかがだろうか。

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