トランプは「初期認知症」なのか?~言葉の言い間違え、曖昧な記憶

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ティム・アップル

 この日のトランプの言葉の乱行は、3月のトランプ発言の数々を思い起こさせた。

 アップル社のCEO、ティム・クックをホワイトハウスに招いての会議の席で、トランプはティム・クックを「ティム・アップル」と呼んでその場にいた人々を驚かせた。メディアのカメラが回っていることもあり、クック本人は訂正をおこなわなかった。

 のちにトランプは「ティム・クック・アップルと言ったが、クックの部分を急いで言ったので皆には聞こえなかったのだ」と取り繕った。それが通用しないと知ると、「時間を節約するためにティム・アップルと言ったのだ」と言い、これも深夜トークショーの格好のネタとなった。

ヴェネズエラはカンパニー?

 3月の後半、トランプは混迷を極めるヴェネズエラ(※)の自称暫定大統領のフアン・グアイドの妻、ファビアナ・ロサレスと会談した際、以下のように話した。

「ヴェネズエラは確かに最も豊かなカンパニー(企業)の一つだったが、今は世界で最も貧しいカンパ……、カントリー(国)のひとつだ」

 国であるヴェネズエラを企業と言い間違えたのだが、2度目は途中で気付き、国と言い直している。

※4月1日、日本政府は公文書における国名表記での「ヴ」の使用を中止したが、本稿では旧表記のままとする

警察・軍・バイカー

 トランプは極右メディア、ブライトバートのインタビューで、自分の支持者から左派への暴力攻撃の可能性を語った。

「オレは警察、軍、”トランプのためのバイカー”からの支持を得ている。粗野な人々だが、彼らは粗っぽい振る舞いはしない、ある地点に達しない限りは。その時は very bad, very bad になるだろう」

 トランプにとっては馴染みの深いブライトバートによるインタビューであり、リラックスしていたのだと思われるが、それでも大統領による暴力推奨発言=脅迫は、これもまた尋常ではない。しかも警察や軍は公機関だ。バイカーは民間人だが、武器を持つ集団である。

 ちなみに「very」の多用、および何かを強調したい場合に「very very」と繰り返すのもトランプ話法だ。

ウソを付くのはなぜ?

 一日のうちに発せられた「オレンジ」「ドイツ」「風車」発言は精神衛生の専門家をも驚かせ、「認知力の低下」「初期認知症の可能性」を警告する記事がメディアに寄稿された。

 とはいえ、先にも書いたように専門家といえども精神疾患の診断を診察なしに下すことは本来してはならず、あえての寄稿だ。新聞は寄稿文をそのまま掲載したが、ニュース専門局は精神疾患については言及せず、代わりに「父親の出生地など、ウソをついても何にもならないことになぜ?」と言った疑問、「ホワイトハウスも釈明に窮している」と言ったリポートに終始している。

 政治パロディを扱う深夜のトーク番組にとっては最上のネタであり、複数ある全ての番組でジョークとなった。

トランプは精神疾患者か否か?

 専門家によるトランプの精神状態への言及は今回が初めてではない。大統領選への出馬表明スピーチに始まり、選挙戦中、当選後を通じてトランプの言動は常に常軌を逸していた。2017年10月には『The Dangerous Case of Donald Trump: 27 Psychiatrists and Mental Health Experts Assess a President 』(ドナルド・トランプの危険なケース:27人の精神科医と精神衛生の専門家が大統領を査定する)という本が出版されている。多くの医師が「診察なしの診断」をあえておこなったのだった。

 この本が出版される直前、精神科の大家、アレン・フランシス博士がすでに大きくなっていた「トランプ精神疾患論」への反論記事を書いている。フランシス医師は精神疾患の世界的診断基準とされる『DSM』の著者だ。記事中、トランプは「狡猾」な手法でアメリカと世界を自分の思う方向に向けようとしているが、「頻繁に言われるような自己愛性人格障害、妄想性障害、認知症など、精神疾患ではない」と断定している。この記事への反論記事を執筆した別の精神科医もおり、専門家の中でも意見が大きく分かれていることになる。

 今回の一連のトランプ発言を受け、『ドナルド・トランプの危険なケース』の著者権編集者であるバンディ・リー博士が4月5日、ニューヨーク・デイリー・ニュースに新たな記事を寄稿した。タイトルは「トランプの精神状態は悪化しているように思える:厳密な精神鑑定を受けるべきである」だ。

 博士は「オレンジ」「ドイツ」発言などと共に、トランプが「34時間で52のツイート」をおこなっており、その内容も以前に比べてさらに辛辣になっていることを憂えている。

 トランプが自ら精神鑑定を受けるなどあり得ないだろう。ホワイトハウスと共和党上層部も異変に気付きながらも見て見ぬ振りをし、あと2年現状維持とするだろう。さらにはトランプに二期目も続投させる予定なのである。
(堂本かおる)

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