『なつぞら』前半は『おしん』を彷彿、若手イケメン俳優の大量投入でまったく先が読めない展開に

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連続テレビ小説『なつぞら』(NHK)ホームページより

 記念すべき100作目となる朝の連続テレビ小説『なつぞら』(NHK総合)。主演には、人気・演技力ともに高く評価されている女優・広瀬すずを抜擢。脇には主役級の豪華俳優が名を連ねている。NHKの並々ならぬ意気込みを感じさせる今作品、いったいどんな朝を私たちに見せてくれるだろうか。

 舞台は戦後、広大な北海道の大自然と日本アニメーションの草創期を舞台に、まっすぐに生きたヒロイン・なつの夢と冒険、愛と感動を描いたドラマである。

栄えある100作目の作品『なつぞら』

 記念すべき100作目を担う脚本家は、『てるてる家族』(平成15年)に続き朝ドラ2作目となる大森寿美男。NHKからの信頼も絶大で、放送90年を記念した大河ファンタジー『精霊の守り人』(2016年-2018年)でも脚本を任されている。栄えある100作目の作品に対して大森は「夏空に一陣の爽やかな風が吹き抜けるような作品にしたい」と抱負を語っている。

 主人公なつを演じる広瀬すずは、「無理してなつの感情を引き出すのではなく、自分がなつとしてその場で感じたことがお芝居になれば」と意欲満々。今までは自身と同年代の人物を演じることが多かった広瀬だが、今回は幅広い年代を演じ分けることになる。広瀬の新しい挑戦から目が離せない。

激動の幼少期を描いた第1週 

 1946年(昭和21年)初夏、戦災孤児となったなつは、父の戦友だった柴田剛男(藤木直人)に連れられて北海道・十勝にやって来る。剛男の妻・富士子(松嶋菜々子)は我が子としてなつを受け入れようとする一方、富士子の父でガンコ者の泰樹(草刈正雄)は働き手にもならないとなつに冷たくあたる。しかし、ここで生きると覚悟を決めたなつは、「私を働かせてください」と懇願。牛馬の世話や乳搾りを必死に手伝い、次第に泰樹の心を溶かしていく―。

 なつの幼少期にスポットを当てた第一週では、残念ながら広瀬の出演は冒頭のみ。美しく輝く黄色い花畑の中、懐かしい青年との再会を果たすなつの姿が映し出される。これからいったいどんな物語が始まるのだろうと期待に胸が膨らんだ。

 まだ9歳という年齢ながら、大人に頼らず戦災孤児として逞しく生きていたなつは、兄や妹と離れ酪農家の柴田家で暮らすことになるのだが、当然手放しで喜ばれるはずがない。なつと同い年である剛男の娘・夕見子などはなつに対し「ずるい」と敵意を向ける始末だ。まだ子どもだというのに周囲の空気を敏感に察知し、ただの居候ではなく働き手としての立場を選んだなつ。疲労のあまり食事中に居眠りをし泰樹に注意される場面は、涙なくして観ることができなかった。往年の大ヒット作『おしん』を彷彿とさせなくもない。

 しかし、なつはひたむきに仕事をこなしていく。その賢明な姿に周囲はもちろん泰樹までもが心を打たれ、彼女の生活に明るい光が見え始めてきた。苦難の渦中にいても決して腐らず前向きに生きるなつの姿に勇気がもらえる。

なつを支えるベテラン俳優たちの好演

 なつの家族となる柴田家の婿養子・剛男とその妻富士子には、どちらも朝ドラ経験者の藤木直人、松嶋菜々子が扮し、富士子の父で厳しいが深い愛情を持つ泰樹を草刈正雄が演じている。藤木は今まで演じた役柄とは雰囲気の違う、気は弱いが優しい父親を好演。子どもたちとの距離に戸惑う普通の父親を自然体に演じていて好感が持てる。彼が紡ぐ温かい言葉の数々に癒やされる視聴者は少なくないだろう。

 明るくはつらつとした母・富士子を演じる松嶋は、母親役を何度か経験しているが、管理職に就いていたり弁護士だったりと特殊な設定で、普通の「平凡な母親」とはかけ離れていた。しかし『なつぞら』では優しさとたくましさを持つ太陽のような母親を清々しく演じており、新たな魅力を開花させそうだ。朝ドラの「母親役」は主人公同様に注目度の高いポジション。今後の活躍も期待したい。

 なつの幼少時代のキーマンである泰樹を演じる草刈は、バラエティで見せる優しく紳士的な素顔を封印し、偏屈でぶっきらぼうな「ガンコじじい」を熱演。なつの懸命な姿に心を動かされる表情や、多くを語らない重厚な演技には惚れ惚れしてしまう。草刈のようなガンコじじいであれば、一家に何人いてもうれしい。

 彼らが演じる愛に溢れた人物たちはなつの第二の家族となり、彼女の人生を温かく包み、支えていく。朝ドラに欠かせない「家族」たちはドラマを盛り上げてくれることだろう。

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