イチローの引退会見で記者のレベルの低さを批判するのは的外れ 記者会見で得られる情報をどう読むか

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 このアナウンサーのことをイチローが個人的にどの程度知っていたのかは不明だが、この対応からすると、ある程度までは知っていた可能性が高いだろう。この(くだらない)質問によって、普段なかなか笑わないイチローが相好を崩して笑うなど、明らかに会見場の雰囲気が変わった。

 この質問は、確かに低レベルではあることには違いないのだが、一方で、ファンが見たかったイチローの笑顔をうまく引き出したと解釈することもできる。

 取材対象者と記者がお互いに知っているのかどうかで、質問が持つ意味やその効果も変わってくることがあるので、会見報道を見る場合には、このあたりについて留意しておいた方がよい。

あえてベタな質問をしたベテラン記者

 一方、スポーツ紙の専門記者の場合、普段からイチローとかなり密接にやり取りをしているので、お互いに相手をよく知っているという状況になる。イチローはスポーツ紙の記者に対しては、レベルの低い質問をしてくる相手は無視するなど厳しい対応で知られている。逆に言えば、イチローと個人的に突っ込んだやり取りができるようになった記者は、イチローがかなり信用していると思ってよい。

 このような信頼関係ができている場合、記者会見の場は、決まり切った質問で公式発言をもらうという、単なる「セレモニー」になることも多い。突っ込んだ内容はすでに何度もやり取りしているし、他の記者もいる会見場でそれをわざわざ聞く必要性は薄い。どうしても聞きたいのであれば、後で個別に取材することもできる。このため、専門記者であるにもかかわらず、会見場では極めて単純な質問をするだけということも多いのだ。

 会見の終盤、質問があと2つに限定されたタイミングで、あるスポーツ紙の記者が「プロ野球生活を振り返って、誇れることは」という、かなり初歩的な質問をした。イチローはこれに対して「これ、さっき言いましたよね?」「集中力切れてるんじゃないの?」と返していた。

 ネット上には、記者のレベルの低さを批判する声が溢れていたが、この質問をした記者はイチローを十数年取材しているベテラン記者である。イチローの性格を考えると、記者の力量を高く評価していないと長期にわたって担当記者を続けることはできない。

 質問が最後の最後になったので、記者はあえて(まとめ的に)ベタな質問をし、イチローもそれに合わせてこうした反応を返した可能性が高い。両名が本当のところ何を感じたのかは、他人である筆者には知る由もないが、おそらく「そんなこと聞かなくても、あなたならいくらでも記事は書けるでしょ」「もうそろそろ会見終わりにしましょうか」といったところだろう。

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