
「Getty Images」より
新たな枠組みでの外国人介護職員の受け入れ
4月1日に改正入国管理法が施行された。これまで外国人介護職員の受け入れは、「EPA(経済連携協定)」「日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」をもつ外国人の雇用(介護系専門学校等の留学生)」「技能実習制度」と3つあったが、今回の改正によって、新たに「特定技能1号」という枠組みでも受け入れが可能となった。
介護業務はルーチン的な仕事の流れではないため日本語能力が就労するうえで重要となる。高齢者のケアは個人それぞれ異なる。千差万別の介護手法を会得していかなければ、一定の介護の質の担保は難しい。
しかし「特定技能1号」では、日本語能力試験(N2~N4相当)をクリアしなくとも、入国前の試験等で「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力(日本語能力判定テスト)」「介護の現場で働く上で必要な日本語能力(介護日本語評価試験)」が確認されれば入国が可能となっている。「特定技能1号」ルートで入国する外国人介護職員に問われる日本語能力は、これまでの枠組みよりはハードルが低いと考えられる。
日本の介護現場の課題
厚労省資料によれば2016年度ベースで約183万人の介護職員が現場で従事しているが、現状の人材確保施策でいくと、2025年には約30万人の介護人材が不足するとの見通しが示されている。その意味では、介護人材の確保が介護業界喫緊の課題となっている。
日本社会において全産業の有効求人倍率も年々高くなっていることから、外国人介護職員の協力なくしては、介護サービスを継続して提供できないことは事実である。
しかし、頭数だけそろえても外国人介護職員を育成・養成していく受け入れ側の体制が充分に整わなければ、せっかく外国人介護職員の方々に来日していただいても、充分な戦力として彼(女)らの役割が発揮できないであろう。繰り返すが、介護業務は単純労働ではないため、高齢者の個に応じられる一定の対応技術を介護職員側が身につけていかなければならない。
介護現場における指導力の議論が抜け落ちている
筆者は福祉系大学にて教鞭をとって約12年が経つ。この間、多くの卒業生を介護現場に送り出しているが、残念ながら介護の仕事に就いてから2年以内に退職して別の業界へ転職した者も少なくない。それらの生の声を聞く中で、転職の原因としてもっとも多いのが、介護長、管理職などの「中間管理職」の指導・養成力不足と、筆者は認識している。実際、介護職員が仕事を辞める理由としては、トップが「人間関係」が課題だ、よく言われるような賃金の安さが原因ではない(図1)。その意味では、中間管理職のマネジメント不足問題が課題といえるだろう。
介護事業所で働く中間管理職は、現在の真の介護人材不足の要因見識がなく、あわせて「新人」の指導・養成力が欠如している人も珍しくない。多くの中間管理職が介護業界に入社した1995年~2000年は、福祉系職種の有効求人倍率0.3~0.5倍程度だった。さらに介護事業所によっては厳格な採用試験もあり、高い倍率をくぐり抜けて入社した者が多かった。
その意味では、現在の中間管理職である30代後半から50代前半は、若い時代に「厳しく鍛えられ」養成・指導された世代といえる。その感覚で、現在の「新人」指導・養成を担当する者が多いため、「意識」しなくとも、その指導方針が、受け止め側からすれば、「いじめ」「パワハラ」となる可能性は否めない。
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現在の若い介護職員は中間管理職とは異なる時代背景の中で育ってきた。かつての感覚で指導・養成にあたる中間管理職らは、一種の「時代錯誤」と評価できるであろう。
既述のように、外国人介護職員に対しても、強い口調で指導・指示する中間管理職も、相当数いるのではないかと予想される。
例えば、日本語が充分でない介護職員に対しては、「いくら言ってもわからない!」「何で覚えが悪いの!」「新人は先輩の姿を見ながら黙って技術を盗むもの!」「全く近頃の若い者は、挨拶もしないで社会常識がない」といった感じで、強い口調で叱る指導者がいる可能性がある。しかし外国人介護職員の受け入れにおいて、彼(女)らを介護施設等で養成する中間管理職の能力・指導に関しては、ほとんど議論されていないのが現状だ。
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