消費税10%なんてとんでもない MMT(現代貨幣理論)から消費税は不要な税金である

文=池戸万作
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「Getty Images」より

 今年10月に行われる予定の消費税増税を巡り、参議院選挙という政局も絡まって、世論が騒がしくなっている。自民党の萩生田光一幹事長代行が、消費税増税延期も有り得るとの観測気球を打ち上げたかと思えば、はたまた「週刊ポスト」2019年5月3・10日号(小学館)においては、消費税を5%に引き下げる案まで浮上しているとのことである。

 こちらの真偽は定かではないが、少なくとも消費税を5%に減税する政策は、再デフレ化が懸念される現行の経済状況下においては、マクロ経済政策としては極めて正しい。それどころか、実は消費税自体が、もはや日本においては「不要な税金」なのである。

 消費税は平成の「負の遺産」として廃棄処理し、令和の新時代には持ち越すべきではないと筆者は考える。多くの人々にとってみれば、これは暴論にしか聞こえないだろう。しかし、通貨発行権と税金の本質を理解していくと、消費税は廃止しかないという結論に至るだろう。

 まずは、平成元年の消費税導入後、平成9年(1997年)と平成26年(2014年)に2度行われた、消費税増税の悪影響や、消費税増税の無意味さを見ていくことにしよう。

1.消費税8%への増税の悪影響はリーマンショック以上

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表1.実質家計最終消費支出(帰属家賃を除く)の推移

 表1は2006年度から2017年度までの帰属家賃(家賃の発生しない持ち家などについても、家賃が発生しているとする計算上の家賃)を除く実質家計最終支出の推移を示したグラフである。5%から8%への消費税増税は2014年4月に行われたので、グラフは年次ではなく年度とした。また、帰属家賃を除いたのは、より個人消費の推移を正確に把握するためである。

 ご覧頂いた通り、2014年4月の消費税8%への増税によって、実に8兆円もの個人消費が落ち込んだのである。この落ち込み幅は、2008年のリーマンショック発生時の6.3兆円をも上回る。よく安倍政権が「リーマンショック級の景気悪化がない限りは、消費税を増税する」と言っているが、消費税増税そのものがリーマンショック級以上の景気悪化を生むのである。

 さらに特筆すべきことは、2015年度以降も個人消費が2013年の水準まで戻り切っていないことである。2015年度も0.3%の増加に留まり、2016年度に至っては-0.4%と、再びマイナスを記録した。2017年度にようやく1.1%まで回復したものの、これでやっと5年前の2012年の水準に戻ったレベルである。つまりは、5年間トータルで見ると、消費税増税のせいで日本の個人消費は全く増えなかったのである。2008年度から2013年度までで、15兆円ほど個人消費が伸びていたのとは対照的である。

 恐らく、2018年度の個人消費も、2013年度の水準までには戻り切っていないであろうと推測される。その状態で再び消費税増税を行えば、個人消費は更に落ち込み、2010年の231.5兆円程度まで落ち込んでしまうであろう。結果、二度の消費税増税によって、この10年間の個人消費は全く増えなかったという日本経済の停滞状況を示すことになるだろう。

 立命館大学の松尾匡教授は、消費税とは、個人消費に対する「罰金」であると述べている。この国の政府は、国民に対して、どうしても消費をさせたくないようである。経済制裁とは、通常は他国に掛けるものであるが、日本国政府は、自国民に対して経済制裁を科している模様だ。

2.消費税5%への増税でかえって税収は悪化

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表2.1996年度(3%)と1998年度(5%)の税収比較

 消費税増税について、もっとバカバカしいことが起きたのが、今から22年前、消費税を3%から5%に引き上げた時だ。何のために消費税を増税するかと言えば、一番は税収増による新たな財源の確保のためであろう。ところがこの時には、消費税増税によって総税収が返って減ってしまうといった珍現象が起きた。

 消費税がまだ3%であった1996年度の消費税収は6.1兆円であった。これが5%に増加した1998年度には消費税収は10.1兆円と2%の増税によって4兆円ほど消費税収が増えた。消費税2%の増税で4兆円の税収が確保できたと考えられるかもしれないが、マクロ経済においては、そう単純な話では済まない

 消費税を5%に増税したことで、景気は悪化し、失業率も上昇してしまったのだ。失業率の悪化により、所得税収は19.0兆円から17.0兆円へ2兆円も減少し、法人税収も、この間に法人税率の3%分の引き下げがあったこともあり、14.5兆円から11.4兆円と3.1兆円も減少。加えて、その他の税収も12.5兆円から10.9兆円へ1.6兆円も減ってしまった。

 その結果、トータルの総税収で見ると、1996年度の52.1兆円から、1998年度は49.4兆円へと2.7兆円もの減収となってしまった。景気も悪化して、失業率も上昇、更には自殺率まで急激に伸びてしまい、挙げ句の果てには、肝心の税収まで減収と、一体全体何のために消費税を3%から5%に引き上げたのだろうか。この時から、平成のお粗末な経済政策が、今日に至るまで20年以上も続いているのである。

 よく消費税を増税すると社会保障が充実してバラ色の未来がやってくるかのような意見も耳にするが、税収の増減は単純な足し算引き算ではない。マクロ経済動向に基づく、税収の自然増減について考慮しなければならないのだ。

 以上のように、消費税増税は全く無意味どころか、害悪でしかないことが分かった。恐らく、未だに消費税が3%であり続けたのならば、その後も順調に経済成長して、今頃、GDPは1000兆円程度には達していたと推測される。その程度のGDPがあれば、総税収も100兆円を超え、増え続ける社会保障費なども余裕で賄えていたことであろう。しかし、現実の日本の名目GDPは約550兆円で、この20年間でほとんど増えていない。総税収も30年前と同じ60兆円に留まっている。同じ先進国であっても、世界中の先進国は2倍、3倍にも名目GDPが増えている中、この日本の停滞ぶりは異常であり、これは平成の経済政策が“大失敗”であったことを結果として如実に示している。

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