5.将来世代に“ツケ”を残しまくれ!
話は少し戻り、MMTについて、財政赤字の拡大はどこまでも可能であるか否かが議論を呼んでいるが、これに関しては、自国通貨建て国債であれば、インフレ率が高まらない限りは、どこまでも拡大可能なのである。
日本の国債も、将来的には2000兆円になろうが、3000兆円になろうが、果ては1京円になろうが、全く構わない。それどころか、逆に国債は増やし続けなければならないのである。無論、一度に増やしてしまうと、インフレ率が急上昇してしまうので、あくまでもインフレ率を注視しながら、という留保付きではある。
これに関しては、これまでの人類の歴史と経済発展が、政府負債の増加によって、もたらされていることから分かる話である。それでは、どれだけ政府の負債が増え続けて来たかを見ていくことにしよう。

表3.21世紀の日米の政府総負債額の推移
表3は筆者が作成した21世紀に入ってからの日本とアメリカの政府総負債額をドル建てで示したグラフである。
良くニュースでは、日本の国の借金1000兆円突破!このままだと日本は財政破綻する!などと言われるが、未だかつて他国の借金については、一切ニュースや新聞記事で流れたことは無いのではないだろうか。
21世紀初頭には、日本の政府負債はアメリカよりも多く、6.3兆ドルと、報道風に言えば、日本は世界一の借金国家であった(本当は世界一の債権国家なので、誤りであるが)。しかし、2005年にアメリカに逆転されて、世界一の座を明け渡していた。こうした報道は全く聞いたことがない。その後も、アメリカの政府負債は増え続け、2017年現在では20.9兆ドル、日本円にして約2300兆円(1ドル=110円換算)もの金額まで拡大している。今や、日本の倍近くにまで膨れ上がっているのである。こうした情報は、日本中ほとんどの人が初耳であろう。この10年間で見ても、アメリカの政府負債額は2007年の9.3兆ドルから、倍以上に増えている。しかし、日本国内で、アメリカこそ財政危機であると言っているアメリカ破綻論者は1人も存在しない(ちなみに、アメリカでは、アメリカ破綻論者も居るようで、逆に彼らは、日本は自国内で国債を賄っているので財政破綻しないと言っているようである。日米両国ともに財政破綻論者は自虐的なのである)。
他国も同様で、例えば中国に至っては、この10年間で約5倍にも政府負債を拡大している。しかし、だからと言って、中国が財政破綻するなどと言う人は、恐らくこの地球上に存在しないであろう。
もっと言うと、日本国内で見ても、日本の国の借金は過去130年間で500万倍にもなっている(http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/no301-a00c.html)。
これらの現実が、政府の負債とは永久に拡大し続けるものであることを歴史的に証明している。だから、日本の国の借金が将来的には、2000兆円になろうが、3000兆円になろうが、1京円なろうが、何の問題もないのである。経済成長の裏側には、必ずこうした政府負債の拡大が横たわっているのだ。「誰かの負債は、誰かの資産。」の簿記の大原則に基づけば、政府負債の増加こそ、国民資産の増加、経済成長の証なのである。
そう考えれば、この20年間経済成長していない日本の国の借金は、むしろ増やし足りないぐらいで、本来ならば、アメリカと同等に2000兆円程度にまで、拡大しているべきであったのだ。そうすれば、今頃、日本の名目GDPも1000兆円以上あっただろうし、私たちの世代は普通にみんなが年収1000万円程度にはなれていたはずだった。この20年間の日本国政府が、国の借金を増やし足りなかったせいで、私たちの世代は親の世代よりも貧しくなっているのである。
これからの私たちは、「国の借金をもっと増やせ。将来世代にツケをもっと残せ。」と政府やマスコミに対して言うべきなのである(念のため、もう一度注釈しておくが、インフレ率が高まるので、一度に増やし過ぎてはいけない)。
ちなみに、2012年から2013年にかけて、大幅に日本の政府負債が減っている理由は、円安が進んだためである。
6.消費税廃止こそがまっとうな経済政策
これまでの話をまとめると、消費税とは個人消費を落ち込ませ、返って税収減にも陥りかねない税金でもある。そもそも税金とは、財源集めのための手段ではなく、インフレ抑制のための手段であり、20年デフレの日本は、税金の取り過ぎによって、いつまで経ってもデフレから抜け出せていない。消費税のような応益負担は貧困者にも負担させるので、経済成長の面でも害悪である。そして、消費税廃止の穴埋めとして国債発行することになるが、国債発行残高は過去から未来に向かって、永久に増え続けることを述べて来た。消費税廃止に関しては下記の3点から可能であることを改めて列記しておく。
1.国家は新たにお金を発行できること
2.税金とはインフレ抑制のために存在すること
3.消費税を廃止してもインフレ率は2%に満たない可能性があること
話のタネとして、読者の皆さんも周囲の知人や友人にも伝えて頂ければ幸いである。
以上のように見ていくと、もはや失われた20年、平成の経済停滞の全ての責任は「消費税」にあると言っても過言ではない。私たちの世代は、この消費税の存在によって、人生を狂わされ、本来得られるはずだった所得を失って来たのである。何度も言うように、税金とはインフレ抑制のためにあり、デフレ下では減税をするのが、まっとうな経済政策である。
昭和の時代には、消費税など存在しなかった。新たに到来した令和の時代も、そうした昭和の時代を見習って、まずは消費税を廃止にするべきである。そこから昭和の時代のように、再び力強く経済成長し、国民所得が増える令和の日本にしていきたいものだ。