聴覚障がい者は推計1000万人以上、まだまだ必要なバリアフリーとは?

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バリアフリー新法に問題あり?

 2006年に制定された「バリアフリー新法」は、施設ごとに格差が生じないようバリアフリー化基準を統一するために作られた法律である。「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインを目標に掲げるが、最善を尽くした設計になっているのだろうか?

 法律を管轄する国道交通省では、毎年、鉄道事業者からの報告をもとに、バリアフリー化の改善状況を公表している。平成29年の報告書には、「駅ホームの段差解消」「転落防止線および視覚障がい者用誘導ブロック」「障がい者対応トイレ」などの設置状況が鉄道会社ごとに表されている。もちろん、段差解消や点字ブロックの設置は重要であるが、電光掲示板や筆談器具の設置など、聴覚障がい者が改善を求めるバリアフリー化の記述がないのが気になるところだ。

 2012年には、全日本ろうあ連盟が国土交通省に対し、聴覚障がい者のためのバリアフリーが不十分として、バリアフリー新法の改正を望む要望書を提出している。そのなかで連盟は、電車内外や駅構内における電光掲示板の表示改善、音声放送の文字化などを求めていた。

 緊急の文字情報を流す電光掲示板の設置を全駅に普及させるにしても、莫大なコストがかかる。鉄道事業者だけにその負担を負わせるのは現実的ではない。国と自治体、事業者が連携していくためのスキームも必要ではないだろうか。

全国に先駆けた鳥取県の取り組み

 バリアフリーは設備の設置といったハード面だけでなく、手話教育などソフト面からのアプローチも重要だ。それをわからせてくれるのが、鳥取県の取り組みである。鳥取県は全国初の「鳥取県手話言語条例」を制定した自治体として、国土交通省から表彰を受けた。県は手話施策を特に重視し、県民や事業者と協力しながら聴覚障がい者向けバリアフリーの普及を目指している。

 駅・バスターミナルを含む県内9カ所には、職員がタブレットを使って聴覚障がい者と会話する「遠隔手話通訳サービス」が導入されている。遠隔操作システムでつながった手話通話者を介したコミュニケーションで、職員の発した声を文字情報に変換する「音声文字変換システム」も同時利用できる。またJR鳥取駅では、手話研修の実施や毎朝の点呼時に手話を10個覚える取り組みなどを通して、手話理解のための教育に励んでいる。

 手話に通じた駅員が増えれば、いざというときのコミュニケーションに役立ち、行動の手助けともなる。しかも、大がかりな工事も必要なくローコストだ。鳥取県の取り組みが全国に広がれば、緊急時における情報障害もだいぶ改善されるのではないか。

 冒頭でお伝えした『令和』発表のアクシデントに対して、新しい時代の幕開けにふさわしいという評判もあった。評判だけで終わらせないためには、政府・自治体・事業者の中身ある取り組みと、聴覚障がいに対する国民の理解が欠かせない。

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