週休3日制導入がもたらす多大なるメリットと、それ以前の課題

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実は低かったニュージーランドの生産性

 パペチュアル・ガーディアン社の例が注目された理由には、ニュージーランドの生産性が低いこともあるだろう。

 公益財団法人日本生産性本部が発表した「日本の労働生産性の動向2018」によれば、OECD加盟国の時間当たり労働生産性でニュージーランドは日本の20位より低い22位となっている。就労者1人あたりの生産も日本の21位より低い23位だ。

 そのように生産性が低いニュージーランドで、週休3日制を導入した企業が登場したことが注目された。日本でもいくつかの企業が週休3日制を導入し始めている。

 たとえば、ユニクロは国内で転勤のない「地域社員」に対して週休3日制を導入している。ただし、1日10時間勤務なので、生産性が高まったとはいえない。また、カラオケ店や飲食店、介護施設を運営しているウチヤマHDも介護施設の一部で週休3日制を導入しているが、やはり1日10時間勤務となっている。

 一方、日本IBMでは「短時間勤務制度」の選択肢のひとつとして週休3日制を採用しているが、こちらは労働時間の短縮に合わせて給与が減額されるので、やはり生産性が高まることを期待しているとはいえない。

 上記の例を見る限り、日本の企業は生産性を高めるために週休3日制を採用しようという意識は薄いようだ。通信やエネルギー分野を事業の柱にしているDHコミュニケーションズのように、内勤総合職に限り、週休3日制を選ぶことができ、1日8時間労働のまま給与が変わらない会社もある。

 導入方法の違いはあるとはいえ、週休3日制度を導入する企業は今後も増えそうだ。それには次のような背景がある。

週休3日制が広まりそうな背景

 給料が下がっているのだから、もっと働かなければ、と思うかもしれないが、実際にはたくさん働いたからといって給料が上がるとは限らない。しかし、たくさん働くことを止めたら給料は下がる可能性が高い。

 その一方で、貧しくなった日本人は共働きせざるを得ないと同時に、育児や介護などで時間のやりくりにも苦労している。より良い業界や職場、働き方を実現するために、自己啓発やスキルアップのための時間も欲しいところだ。

 東京産業労働局が調べたところでは、希望する労働時間制度は何かという質問で回答のトップは「週休3日制度」が1位だった。2位は「フレックスタイム制」、3位は「在宅勤務」、4位は「短時間正社員制度」、5位は「朝型勤務」だった。つまり、週休3日制への期待は大きいといえる。(東京都産業労働局 『平成28年度 労働管理に関する実態調査』の『第3章 従業員調査の集計結果』)

 週休3日制への希望が多いのは、ゆとり世代がお金よりも休みをほしがっているとの解釈もあるが、おそらくもっと多様な理由によるワーク・ライフ・バランスへの要望だろう。

 人手不足で悩んでいる企業もこのことはわかっていて、若い人材を集めやすくすると同時に辞めにくくするためには、労働環境を整備する必要があると考えているはずだ。したがって、先の調査で最も要望の強かった週休3日制を検討しなければならない時代になっているといえる。

 企業の人手不足は深刻だ。帝国データバンクの調査(2018年1月)によれば、51.5%の企業が正社員不足に陥っており、非正社員についても34.1%の企業が不足していると回答している。(帝国データバンク『人手不足に対する企業の動向調査』)

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