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良品計画の「MUJI ホテル 銀座」、そのしたたかな戦略

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クロス分析でわかる成長の実態

 ところで、企業の業績推移を見る手法にクロス分析というものがある。これは、「売上高と営業利益を2軸とする2次元平面上で、業績の年次推移を点の軌跡として描く」というものだ(中学校の数学の時間に習った「点の軌跡(点の運動)」を思い出してほしい)。

 理想は売上高と利益の両方が成長する軌跡だ。危険なのは、売上高は増えているのに、次第に利益率が低下していく場合だ。売上高は増えているので、一見すると成長しているように見える。しかし、利益率が低下しているので、やがて事業は壁にぶつかる。

 百聞は一見に如かず、具体例を見てみよう。

 図1は、あるメーカーのクロス分析である。1993年3月期から2018年3月期までの業績推移を売上高(横軸)と営業利益(縦軸)の2次元平面上で点の軌跡として描いたものだ。2003年から2007年までは、順調に右肩上がりで動いていることがわかる。つまり、増収増益で推移しており、かつ利益率が向上している理想的な推移だ。

 ところが、2007年3月期以降は、一気に坂道を転げ落ちるように減収減益(左下へ移動)となっている。この時期はリーマンショックで、どの企業も似たような状況になってはいる。ただ、この企業は主にBtoCの製品を扱っているので、BtoBの企業ほど落ち込みは少なくてよいはずだ。

 要因のひとつとして考えられるのは、この企業が持つデジタルカメラ事業の変化だ。銀塩カメラを駆逐したデジカメであったが、アップルのiPhoneの登場によって大きな影響を受けた。デジカメの栄華は思った以上に短かったのだ。実際、この企業はデジカメ事業を縮小し、高級腕時計に特化することで、減収となったもの2010年以降は増益に転じていることがわかる。2018年3月期の営業利益率は10%と高い。

良品計画の「MUJI ホテル 銀座」、そのしたたかな戦略の画像2

図1 大手メーカー(時計・電子機器)のクロス分析

 

 では、良品計画はどうであろうか。図2にそのクロス分析結果を示す。

 一目でわかるように、理想的な成長が見られる。リーマンショック時期の落ち込みもそれほどひどくない。売上高も利益もともに成長し、しかも、利益率を上げてきているのだ。

 良品計画が提供する製品やサービスがそのビジネスモデルのもと、相互に関連しあい相乗効果を上げているからだと思われる。実際に、良品計画の事業内容を見てもその様子がうかがえる。MUJIホテル銀座も、ホテルが単独で存在するのではなく、同じビル内に無印良品の商品群が売られている。ひとつの場を提供しているのだ。

 ビジネスモデルの究極の姿が場(プラットフォーム)を創ることだとすると、良品計画はそこに向かって着々と歩んでいるように見える。もちろん、MUJIホテルの成果はこれから問われることになるが、いかに東京オリンピック後も安定成長を続けるかがカギとなる。そのとき、固定価格はどう影響することだろう。

良品計画の「MUJI ホテル 銀座」、そのしたたかな戦略の画像3

図2 良品計画のクロス分析

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