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ニューヨーク:ローカルなポップアップ・ショップの魅力と、ブラック・ドールのお話

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 今、ニューヨークではポップアップ・ショップがブームとなっている。ポップアップ・ショップとは、空き店舗やレンタル・スペースなどに突如として開店し、短期間の営業ですぐにクローズするイヴェント性の高いショップを指す。狭い場所で1店舗のみのこともあれば、広い会場に多くの店舗ブースが出るものもある。1日限定もあれば、週末のみ、もしくはホリデーシーズンや行楽シーズン中はずっと開いているものもある。有名ブランドがプロモーションのために開催することもあれば、地元アーティストが作品を持ち寄るローカル色の強いものもある。今ではポップアップ・ショップ用のレンタル物件をまとめたサイトもあり、賃貸料は会場の場所、面積、アメニティによって1日あたり150ドル程度から15,000ドルと大きな開きがある。

 今回はニューヨークのハーレムでのローカル・ポップアップ・ショップについてリポートする。

 ハーレムはマンハッタンにあるアフリカン・アメリカンのコミュニティだ。1920年頃に黒人街となった際、ジャズ・ミュージシャン、小説家、詩人、画家など多くの黒人アーティストが活躍し、“ハーレム・ルネッサンス”と呼ばれる一時代を形成した。ハーレムは独特のユニークなファッションを生み出す街としても知られる。つまり昔から多くのファッション・デザイナー、帽子デザイナー、ジュエリー・デザイナーを抱えているのだ。また、アメリカ黒人以外にアフリカ諸国からの移民、ジャマイカなどカリブ海諸国からの移民も少なくなく、彼らもそれぞれ独自のアートやファッションを紡ぎ出している。

 そんなハーレムも近年は再開発が進み、黒人以外の新しい住人も増えている。ところが、その中にもやはり多くのアーティストが含まれており、ハーレムは今も昔と同様に豊かなカルチャーの街であり続けている。

ハーレム発のカルチャーを世界に

 ハーレム在住のアーティストである3人の女性が、ハーレム発のカルチャーを育て、支え、世界に発信する場を提供しようと始めたのが「ハーレム・メイカーズ・コレクティヴ」だ。3人の女性とは、ファッション・デザイナーのヘイケ・ジャリック、ハット・デザイナーのカリマ・デオダート、ジュエリー・デザイナーのマイコ・スズキだ。

 3人はストライヴァーズ・ロウと呼ばれるハーレム内の高級住宅の一角を改装してできた大きなアートギャラリーを会場に2カ月に1度、「ハーレム・メイカーズ・コレクティヴ(HMC)」と称した3日間のショッピング・イヴェント(ポップアップ・ショップ)を開催している。

 4月のHMCには20余りのショップが参加した。主催者3人それぞれのショップの他に、アート、ヴィンテージ・インテリア、陶器、フラワー、オーガニックのデザート、ティー、ジャム、チョコレート、クラフト醸造のバーボン、ホームメイドのスキンケア用品、ソープ、キャンドル、ビーズ細工のジュエリー、男性用ジュエリー、手染めのスカーフ、春物ニット、高機能ポロシャツ、そして筆者のブラック&ブラウン・ドールといったラインナップだ。毎回パフォーマンスもあり、今回は詩人による詩の朗読。夕刻はワインかビールが振る舞われる“ハッピー・アワー”となり、売り手もお客も軽く飲みながらのリラックスしたショッピング・タイムとなる。ちなみにビールも地元ブランドの「ハーレム・ブリューイング・カンパニー」のものが出される。

ローカル・ショップの魅力

 こうしたローカル・ポップアップ・ショップには独特の和やかな雰囲気がある。地元に根付いたイヴェントであるため、まず近隣の住人が“ふらっと”やってくる。中にはジョギング中にショップに気付いて立ち寄り、「今、サイフ持ってないから後でまた来るよ」という人、日曜の朝に「今から教会だから、午後に来直すわね」という女性たちもいる。

 観光客もやってくる。ハーレムには大きなホテルはないが、Airbnbなど民泊があり、彼らもやはり散策中に気付いてやってくる。地元民と観光客のどちらにとっても、「ここでしか買えない」ユニークな商品を手に入れる絶好の場となっている。

 特に地元住民には、時間をかけて全てのショップを周り、それぞれのオーナーと話し込む人が少なくない。ショッピングだけでなく、コミュニケーションの場としても楽しまれているのだ。おしゃべりしているうちに、「これ、いいね」と次々にと買って行く。20数軒のショップを回って3つも4つもショッピング・バッグを手に帰っていく人がいる。中には「地元を支援したいから」という理由で買う人すらいる。ショップのオーナーもお客の少ない時を見計らい、他のショップからの気に入った商品を買う。まさにコミュニティによる、コミュニティのためのイヴェントなのだ。

 売り手のアーティストや小規模な起業家にとって、ポップアップ・ショップは新たなビジネス・チャンスを得る場にもなっている。他のポップアップ・ショップの主催者が訪れ、そちらへの出店を打診されたり、異なる業種のオーガナイザーやプロデューサーが「何か新しいもの」を求めて立ち寄り、契約が成立することもある。

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