これら複数の無罪判決報道を受けて、ネット上では「拒否できなかったら、同意ではなくてもレイプにならないのか」と憤る声が勢いを増している。
ただ性犯罪においても他の犯罪と同様、被害者の申告のみを根拠に有罪を迫るわけにはいかない。基本原則は“推定無罪”だ。また、起訴されれば有罪率は99.9%。「無罪」となった上述の裁判に関しては、報道されていない部分も多いだろう。短い報道記事が一人歩きし、処罰感情が煽られ、議論をやりづらくしている側面もある。私たちは冷静さを取り戻さなければならない。そのためにも、性犯罪の裁判において何が「有罪」「無罪」を分けるのか、あらためて知る必要があるのではないだろうか。
子供への性行為も処罰対象となった
まず前提として、日本では2017年に、刑法の性犯罪規定が大幅に見直され、「強姦罪」の名称と内容が改正されて「強制性交等罪」が施行された。それまでは性犯罪の被害対象が女性に限定されていたが、改正後は被害者の性別を問わない、非親告罪化など、より柔軟かつ厳格なものに変えられたのだ。
さらに、「監護者わいせつ罪」「監護者性交等罪」が新設され、18歳未満の子供を監護・保護する立場の親などが、その立場を利用して子供にわいせつ行為や性交等を行った場合、処罰されることになった。これは暴行・脅迫を要件としていない。
しかし(4)の事件に関しては、2017年の被害においては女性が19歳だったことから、監護者性交等罪は適用できず、準強制性交等罪で起訴したと考えられる。
上記4つの事件はいずれも男性が加害者・女性が被害者だが、たとえば(4)の事件において、「性交について娘の同意はなかった」と認定しているが、「暴行又は脅迫」はなかったとされた。同意のない性交自体は罪に問われない。この違和感はどう解消すればいいのか。
以上を踏まえ、弁護士法人 ALG&Associatesの山岸純弁護士に話を伺った。