「反抗を著しく困難ならしめる程度」の「暴行又は脅迫」とは
――まず最初に、監護者性交等・わいせつ罪(刑法179条)の導入にいたる経緯を教えてください。
山岸「親などによるレイプの場合、暴行や脅迫ではなく、『その立場』を利用したレイプが多かったので、『暴行や脅迫』を認定できず、処罰することができませんでした。そのため、『その立場』を利用した犯罪も厳しく処罰するために設けられたのです」
――加害者が親族である場合と赤と他人の場合では、争点にどのような違いが出るのでしょうか。
山岸「『親族』という『その立場』をレイプに利用したのかどうかが他とは異なる争点となります」
――家庭という密室において、他の家族が誰も被害児童の訴えに耳を貸さないという悲惨なケースも考えられますよね。
山岸「犯罪学上、家庭内で児童が性的暴行を受けていても、他の家族もその加害者の被害に遭っていることが多く、“声を挙げる”ことができない状況が多いようです」
――そのような場合ですと、抵抗の有無も判断しづらいのではと思うのですが……法廷において、性犯罪被害者の“抵抗できたか否か”を判断する具体的な基準があれば教えてください。
山岸「『基準』はないのですが、その状況(それまでの経緯、それまでの加害者・被害者の態度、場所、加害者の地位・体格・言動、被害者の地位・体格・言動、避妊の有無、ケガの有無)を具体的に見て、『一般的に考えて、この状況の下では抵抗できない』と判断される場合、『反抗は著しく困難であった』と判断されます」