連載

「年金=悪」という思い込みは危険。検討されている3つの制度改革を解説!

【この記事のキーワード】

②在職老齢年金の廃止を検討

→誤解パターン:働いていると年金をもらえなくなるんですか?

 在職老齢年金という制度はネーミングが悪いようで、ニュース以前に、制度が誤解されている例に出くわしました。在職老齢年金とは、厚生年金保険に加入しながら受ける老齢厚生年金というのが正式な仕組みではあるのですが、実際には「働き過ぎてカットされた年金」と考えるべきです。

 在職老齢年金とは、

・60歳から65歳まで:賃金と年金額の合計額が月28万円を上回る場合、一定の計算のもと年金をカット。
・65歳から:賃金と年金額の合計額が月47万円を超える場合、一定の計算のもと年金をカット。
※賃金が一定額を超えると、カットどころか全く年金がゼロになります。

 在職老齢年金の廃止というニュースは、働きながら年金がもらえなくなるのではなく、「カットされなくなる」ということです。これは、働いたら働いた分の賃金と自分の年金を両方フルで受け取れるわけですから。個々人ベースで考えると喜ばしいニュースなわけです。

 「その年金はどこから出るの?」という疑問は当然生まれると思います。在職老齢年金の廃止は、高齢者の受け取る年金の支え手である現役世代に負担がくることになります。これは最初のニュースに繋がります。「働く人の年金のカットは廃止してあげるけど、その分のお金は70歳以上の厚生年金の加入対象者にも払ってもらいますから!」と無理矢理バランスを取ろうとしているようです。

 ちなみに、在職老齢年金という制度は個人事業主には関係ありません。老後の年金カットを避けたいなら個人事業主として稼ぐ方法があります。会社から仕事をもらっていても業務委託契約などにしてもらうという裏技もあるので調べてみてください。

③受給年齢70歳超も可能とする選択肢を検討

→誤解パターン:いよいよ年金は70歳までもらえなくなるんですか?

 現在、公的年金の受け取りは原則65歳ですが、繰上げて60歳からもらうこともできるし、繰下げて70歳まで遅らせることも可能です。65歳よりも早く受け取ろうとするとすればするほど年金額は下がります。逆に遅らせれば遅らせるほど年金額は増える仕組みです。

 健康に自信がないから額が減っても早く受け取ろうという人もいるでしょうし、とりあえず食べていけるから長生きした時に備えて増やしながら置いておこうという人もいるでしょう。とにかく年金を受け取る権利さえあれば、60歳から70歳の範囲でいつから受け取りを開始するのかを1カ月単位で自由に選べる仕組みになっているのです。

 今回のニュースは、繰下げの年齢を、現行のように70歳までと決めずに希望に応じて70歳超でもOKとしましょうという検討です。つまり、選択肢が増えるだけであって、全員の年金を70歳超まで受け取れないように改正しようという話ではありません。

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 昨今「年金=悪」と即座に変換してしまい、ニュースや制度を誤解しているケースが散見されます。

 年金のことなど、人生のどの場面でも教わる機会はまずありませんし、厚生労働省やかつての社会保険事務所、現在の年金事務所などの悪い報道もあるので無理もないのですが、誤解によって年金未納率が上がったり、次の世代にも誤解が広まったりするのは問題です。

 現状、年金の制度に取り組む政府の姿勢は「ブラック政府」だとは思いません。問題はお金がないことです。お金がない中で高齢者を支えていく仕組み作りを、国民の顔色を見ながら嫌われない程度のさじ加減で進めているという印象です。

 繰り返しになりますが、今回挙げた3つのニュースに関しては、即座に悪と判定できるものではないと筆者は考えます。ただし、お金がないことのしわ寄せはいずれ間違いなく訪れるでしょう。

 小さく叫んでも年金財政はよくなりませんし、自分に今できることを考えましょう。3つのニュースも来年には結論が出そうですので、今後の展開を見守っていきたいと思います。

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