A.L.C.貝塚学院側の言い分
A.L.C.貝塚学院はなぜ、事業の継続が困難になったのか。保護者への説明会では、この10月から始まる幼稚園無償化による入園児離れを読み切れていなかったためだとしている。
確かに2019年4月の入園児数は71人と、5年前の半分以下にまで落ち込んでいた。しかも、A.L.C.貝塚学院は幼稚園無償化の対象から外れる。そのため、今後はさらに入園児の減少が続くと予測して閉園を決めたという。認可幼稚園にすることも財務上無理だと判断していた。
とはいえ、A.L.C.貝塚学院は決してぽっと出の施設ではない。創業は1976年で、英語に力を入れるという特徴もあって、300人近くが通う規模の大きな認可外幼稚園なのだ。
幼稚園の認可・無認可とは何か?
ここまでA.L.C.貝塚学院を便宜上「認可外幼稚園」と呼んできたが、本来は「幼稚園類似施設」や「幼児園」などと呼ぶのが正しい。
確かにA.L.C.貝塚学院は、3~5歳児を預かる幼稚園「型」の施設ではある。しかし、認可外であるため文部科学省の管轄外の施設となる。つまり私塾的な位置づけであり、たとえば野球教室や水泳教室と同じような施設となる。ただ、その教育方針のユニークさから、川崎市外からも園児を集めていた。
保育園の認可と無認可はよく知られているようだが、幼稚園の認可と無認可はあまり知られていないようだ。この度のA.L.C.貝塚学院の閉鎖騒動で初めて知った保護者も多かったのではないか。
幼稚園には学校教育法に基づいた教育施設だ。ちなみに保育園は児童福祉法に基づいた福祉施設である。そのため管轄も幼稚園が文部科学省であるのに対し、保育園は厚生労働省となる。
幼稚園には幼稚園施設基準で定められた設置基準がある。必置職員(園長、教諭、学校医、学校歯科医、学校薬剤師)や1学級35人以下につき専任教諭1人、そして保育室や職員室、運動場があること、さらに園舎や保育室、運動場の面積が一定以上であることなどだ。
(厚生労働省「幼稚園と保育所の基準の比較【職員配置・施設設備等】」より
この基準をクリアして自治体から認可を受けていなければ、幼稚園という名称は使えない。一方、認可されれば国や自治体から補助金が出る。
それでは認可されることを目指せばよいではないか、と思ってしまうが、認可を得ようとすれば、それなりの施設や要員を集めなければならない。同時に、音楽中心、語学中心、運動中心など独自の教育を行うことが難しくなる。今回のA.L.C.貝塚学院も独自の教育方針で入園児を集めていた。
ただ、無認可幼稚園はユニークな教育を行える反面、やはり補助金が出ない分、授業料が高くなったり、職員の賃金が低めになったり、あるいは福利厚生が薄くなったりする傾向がある。
つまり、無認可の利点は施設運営側からすれば独自の教育方針を持てることであり、保護者側からすれば選択肢を多く持てることだ。たとえば自分の子には音楽の英才教育を受けさせたいとか、語学やコミュニケーション能力に優れたグローバルな環境で育てたい、といった希望に沿った教育を受けさせることができる。
逆に欠点は運営側にとっては補助金を得られないことであり、保護者側にとっては標準的な教育ではないことへの不安や授業料の高さになる。