ドラマ『インハンド』の「ハートランドウイルス」は実在する マダニから人に感染、命を落とす危険も

【この記事のキーワード】

 SFTSは“人獣共通感染症”

 感染症法でSFTSは、動物・節足動物・飲食物を介して感染し、人から人にはうつらない「四類感染症」に分類されているが、マダニに噛まれたのか定かでない患者が半数もいる。診察しても、マダニの刺し口がみつからないのだ。実際、血液などの体液との接触で、人から人への感染が報告されている。じつは、猫に噛まれて発症した報告もあり、SFTSは“人獣共通感染症”だ。ただし、エボラ出血熱のように医療機関で二次感染が多発する現象はみられない。

 ドラマ『インハンド』第2話では、人から人への感染ルートの解明の中で現れる「スーパー・スプレッダー」が重要な役どころとなる。スーパー・スプレッダー=超ばら撒き人とは、異常に多くの人に病原体をばら撒く一部の患者をさす。感染防止対策では、大きな懸念材料だ。2002~2003年、中国の広東・香港、シンガポールで流行した「重症急性呼吸器症候群 (SARS:サーズ)」で注目された。

 「スーパー・スプレッダー=超ばら撒き人」とは?

 広東でSARSの治療に関わっていた60代の医師(内科教授)が、症状があったにもかかわらず、親族の結婚式に出席するために香港を訪れた。そして、ホテルの同じ階に宿泊していた16名に“二次感染”が生じた。宿泊客はカナダ、シンガポール、台湾、ベトナムなどへ向かい、行き先でSARSを発症。世界的な伝染へとつながったのだ。

 しかし、こうした「超ばら撒き現象」が生じるのは、人から人へ伝染する病原体による感染症に限られる。腸チフス、麻疹(はしか)、結核のほか、2014年に西アフリカで流行した致死的ウイルス感染症、エボラ出血熱(28,512人が感染して11,313人が死亡。死亡率40%)でも観察された。

 ハートランドウイルス感染症はマダニ媒介性疾患で、SFTSと症状はよく似ている。しかし、患者体液との接触で人から人に拡大していくことは、現実的にほぼありえない。ドラマを通じて一般の人が関心をもつことは、感染症予防への啓発につながるかもしれないが、マダニ媒介性疾患が人から人へと拡散しやすいという“誤った認識”をもってもらっては困る。感染症の専門家として大いなる危惧を抱いている。ドラマとはいえ(ドラマだからこそ)、その影響力を考慮した制作を願う。

1 2

あなたにオススメ

「ドラマ『インハンド』の「ハートランドウイルス」は実在する マダニから人に感染、命を落とす危険も」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。