
「Getty Images」より
少子高齢化社会の中で、女性は重要な労働力となっていることは紛れもない事実です。しかし、女性の労働環境は必ずしも整っているとは言えないでしょう。
女性の場合、妊娠・出産となれば、「育児休業制度」を利用して仕事を休む人もいますし、託児所を設ける企業も増えてはいます。しかし多くの女性は、いまだに結婚を機に、あるいは妊娠・出産を機に退職します。そして、ある程度の子育てを終えると、契約社員、派遣社員あるいはパートなどとして仕事に復帰するケースが多く見られます。こうした女性たちの前に立ちはだかっているのが、「所得の4つのハードル」です。
「所得の4つのハードル」とは、妻の年間所得103万円、106万円、123万円、130万円を指します。仕事をしている既婚女性と話をすると、よく「103万円までしか働けない」や「130万円までしか働けない」という声を聞きます。平成30年度(2018年)の税制改正によって、所得判定時の「配偶者特別控除」の適用が拡大され、妻の年収150万円までは夫の収入から満額の38万円を控除できるようになりました。しかし、見直されたのは「配偶者特別控除」だけであり、妻自身の住民税や所得税という面では、立ちはだかる「ハードル」は変わっていないのです。
一方で、果たして103万円や130万円が何を指しているのか、しっかりと理解しているでしょうか。何となく、うろ覚えで「103万円や130万円を超えるとマズイ」と思っている人も多いのではないでしょうか。そこで、それぞれの金額について詳しく説明していきたいと思います。
まず、「4つのハードル」のうち、年間所得の103万円と123万円は「税金」の関係であり、年間所得の106万円と130万円は「社会保障」の関係となります。
<103万円のハードル>
年間所得103万円のハードルは、所得税等の関係です。妻が働いて得た所得が103万円を超えると、所得税や住民税の納付義務が発生します。所得税は、所得額に応じて所得の5~45%を納付することになります。また、住民税は住んでいる自治体によって税率が異なりますが、おおよそ所得の10%を納付することになります。
従って、103万円までは無税ですが、103万円を超えると、手取り額が「所得税+住民税」分減少することになります。ただし、妻が103万円以上の所得を得ても、夫の所得税が上がったり、所得額が減額されることはありません。
むしろ、気をつけなければならないのは、夫の勤める会社が扶養手当を支給している場合、扶養手当の支給を妻の所得が103万円以下としている会社が多いため、扶養手当がなくなる可能性があることでしょう。例えば、これまで月額1万円の扶養手当が支給されていれば、それだけで手取り額が年間12万円減少することになってしまいます。
<123万円のハードル>
年間所得123万円のハードルも、税金関係です。妻の年間所得が123万円を超えると、夫が受けられる税金の控除「配偶者特別控除」が受けられなくなります。サラリーマンならおなじみの年末調整で申告する「配偶者特別控除」です。
配偶者の控除には、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」があります。「配偶者控除」は、妻に38万円を超える所得があった場合には受けられなくなりますが、「配偶者特別控除」は妻の年間所得が38万円を超えても、123万円以下であれば控除を受けることができます。
「配偶者特別控除」は夫の年間所得と妻の年間所得によって、控除できる金額が変わってきますので、下表を参考にして確認をしておくのがいいでしょう。また、所得税・住民税と同様に、妻の所得が年間123万円を超えたからといって、夫の所得額が減ることはありません。
<106万円のハードル>
年間所得106万円のハードルは社会保障関係です。妻の労働状況が以下の条件に当てはまる場合には、年間所得が106万円を超えると給与から社会健康保険の保険料と厚生年金の掛け金が差し引かれることになります。
(1)働いている会社の従業員数が501人以上
(2)1年以上雇用される見込みである
(3)1週間の勤務時間が20時間以上
(4)賃金が月額88000円(年収106万円)以上
(5)学生ではない
(6)年齢が70~75歳未満
妻の年間所得が106万円だとすると、社会健康保険の保険料、厚生年金の掛け金で月額1万4000円程度、年間で17万円程度が給与から引かれることになります。つまり、年間所得106万円の場合、手取り額は90万円以下となります。
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