
早稲田小劇場どらま館で、4月初旬に講演
劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、ときに舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。
舞台芸術のなかでも、小規模な劇場で上演される「小劇場」というジャンルは、作品内容の豊富さやチケット価格の手頃さから手軽に楽しめるものです。どんなものを選んだらいいのか悩んでしまう、ある意味ではハードルが高くなるものでもありますが、演者との物理的距離の近さからの一体感、目の前で展開される劇空間の一部になれる舞台ならでの高揚感が、もっとも鮮明に体験できるのも、小劇場かもしれません。
女と男の奇妙な同居生活
どんなふうに演目を選んだらいいのか、そのフックのひとつとして、著名な作家や作品をセレクトするという手があります。このほど早稲田小劇場どらま館で上演された、安部公房作、劇団ブルーライオンアンブレラ「砂の女」は、作中の砂の穴の中にとらわれた閉塞感と劇空間の濃密さがマッチした好例でした。
現代でも熱烈なファンの多い安部公房は、ノーベル文学賞の候補に上がるほど世界的に評価の高い小説家、劇作家であり、自身で演劇集団を立ち上げ、優れた演出家としての顔も持ち合わせていました。1962年に刊行された「砂の女」は、近代日本文学を代表するとともに安部の代表作で、64年には安部自身の脚本により映画化もされています。
カズオ・イシグロのノーベル文学賞報道の無邪気さと、二重国籍問題・水原希子・芥川候補作選評との矛盾
2017年ノーベル文学賞にイギリス人作家のカズオ・イシグロ氏が選ばれた。カズオ・イシグロ氏は、『日の名残り』『充たされざる者』『わたしを離さな…
今回上演されたのは、同劇団を率いる林真樹子が脚本、演出を手掛け、男(仁木順平)を老舗劇団の青年座所属の綱島郷太郎、女をNHK朝の連続テレビ小説『さくら』でヒロインを務めた高野志穂が演じています。