泊まれる本屋や入場料を払ってでも入りたい本屋。出版不況にあらがうユニークな書店の奮闘

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マンガに浸るためのホテル

 そのホテル「マンガ アート ホテル トーキョー」は神田錦町にある。書店の街、神保町にも近い。ホテルの入り口に掲げられている「漫泊」とは、マンガを読みながら泊まれるという意味だ。

 ビルの2フロアを使っているが、廊下があって各部屋の入り口がある一般的なホテルの作りになっていない。そこには約5,000冊のマンガが置かれた書棚が並んでいるのだ。そして、その書棚のところどころに、子どもの秘密基地のような小部屋があり、そこが宿泊用のベッドルームとなっている。施設の形態としてはカプセルホテルのようだ。この雰囲気は言葉ではわかりにくいので動画を見て頂くとよいだろう。

 このホテルでは、宿泊客は寝に来るというより、ただひたすらマンガの世界を堪能する時間を過ごしに来る。どちらを向いてもマンガが置かれた空間でマンガと出会い、読みながら寝落ちし、目が覚めたら再び読むのだ。

 気に入ったマンガに出会えれば、購入することもできる。その意味では書店とも呼べるのだ。とにかくマンガが好きな人にとっては、至福の時間を過ごせる空間だ。

箱根で本に囲まれて過ごす

 泊まれるといえば、マンガに限らずあらゆるジャンルの本を約1万2,000冊揃えたホテルもある。

 こちらは箱根の「箱根本箱」だ。箱根だけに露天風呂もあり、客室は18室。

 この宿のWebサイトには、本好きな人だけでなく、日頃本を読まない人にこそ利用して本と出会ってほしいとの思いが記されている。本好きの人のためにもさまざまな仕掛けが施されているが、特に著名人が選んだ「あの人の本箱」というコーナーは興味深い。

深夜の書店を体験できるイベント

 たくさんの本に囲まれて一夜を過ごしたいのであれば、上記のような宿泊施設でなくても可能だ。ずばり、それほど本が好きなら書店に泊まれば良いじゃないか、というイベントだ。

 深夜の書店を体験できる、本好きであればワクワクするようなイベントを企画しているのがジュンク堂だ。このイベントは、Twitter上で「ジュンク堂に住みたい…」というつぶやきが投稿されたことから始まったらしい。

 映画『ナイトミュージアム』のように、普段は日中しか入れない施設の夜には、非日常的な空間が待っていそうな予感がする。そのため、夜の水族館や動物園も人気がある。

 同様に、大型書店で一晩過ごせるのは、本好きにはたまらないだろう。そこには昼間と同じ本が並んでいるだけのはずなのだが、なぜかワクワクする。このようなジュンク堂ではいくつかの店舗で、「ジュンク堂に住んでみる」もしくは「丸善ジュンク堂に住んでみる」と銘打ったイベントを行っている。

 このイベントは2014年から不定期に各地のジュンク堂もしくは丸善ジュンク堂で行われている。毎回応募者が殺到している人気企画のようなので、今後も続けられると思われる。

入場料を払ってでも入りたい書店

 泊まり込むほどではないが、どっぷりと本の世界に浸れる空間がほしい人には、六本木の「文喫 六本木」がある。

 ここは驚くことに、書店であるにもかかわらず入場料1,500円(税別)を支払わなければならない。しかもサブスクリプションというわけではなく、本を購入する時には通常通りに代金を支払う。

 したがって、入場料に見合う価値を提案する書店であるということだ。つまり、一日中存分に過ごせる書店になっている。入場料を支払うと、Wi-Fiのパスワードが記載されたバッジヂを渡される。店内での滞在時間も、営業時間内であれば特に制限はない。コーヒーと煎茶は飲み放題だ。

 置かれている約3万点の本はすべて売り物だが、店内にいる間は自由に読むことができる。事前に予約しておけば書籍のコンシェルジュが相応しい本を用意しておいてくれる。つまり、Wi-Fi使い放題、コーヒーなど飲み放題、本読み放題であることを考えれば入場料は決して高くない。1,500円など、ビジネス書の1冊でも読み切ればすぐに元が取れてしまう金額ではないか。

新刊だけを売っている書店

 ここまで紹介した書店は、ユニークとはいいながらもかなり豊富な品揃えも売りだった。やはり小型の書店は消えていくしかないのかと思うかもしれない。

 ところが、小型ならではの特徴を打ち出しているユニークな書店がある。小型書店の欠点は、たくさんの本を揃えるスペースがないことだ。そこで、新刊書に的を絞って販売している書店があるので、2店紹介したい。

 1店めは、都内杉並区にある「本屋Title」だ。JR中央線の荻窪駅が近い。古民家を改装した2階建ての書店で、1階には書店とカフェがあり、2階にはギャラリーがある。

 スペースに限りがあるため、新刊書に絞った品揃えになっている。オールジャンルだが、生活に関わる本に力を入れているとのことだ。また、2階のギャラリーはイベント会場にもなるため、本に関するイベントが開催される。

 2店めの書店「H.A.Bookstore」も新刊だけを売るが、基本的に週末と祝日しか営業しない変わった書店だ。場所は台東区蔵前。

 H.A.Bookstoreが新刊だけを販売するのは、新刊が売れなければ作家や出版社が次の本を作るお金を稼げないからだという理由らしい。もっともだ。つまり、新刊を売ることが未来の本につながるという発想だ。

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