社会

詐欺メール業者はなぜ絶滅しないのか? 身近なサイバー犯罪への地道な対策は

【この記事のキーワード】

 私腹を肥やし続けているサイバー犯罪者たちにつけ込まれることのないよう、しっかりと対策したいところだ。しかし個人が取り得る対策は、限定的であると岡嶋氏は言う。

「セキュリティの話を求められたときに辛いのは、カタルシスを得られるような対策を提示できないことです。“交通事故に絶対に遭わないための対策はありますか?”と問われても、答えられないのと同じことで、身近な環境に埋め込まれたリスクから身を守ることはとても難しい。これだけ社会の一人ひとりにコンピューターやスマホが浸透し、学校や会社でも必需品と化しているなかで、使わないという選択肢は予め奪われています。そして、使う以上は必ずなんらかのリスクがあるのです。

 ですから、“日々の生活のなかでコンピューターの知識を身につけて行きましょう”とか、“使う際には注意をしましょう”といった、通り一遍のことしかお伝えできないのです。

 一方で、時間対効果、費用対効果の高いセキュリティ対策は“教育をすること”とよく言われています。これは本当に地味で面白くない答えなのですが、まったくその通りなのです。2020年度より、小学校でプログラミング教育が必修化されますが、これはサイバー犯罪へのいい対策になるでしょう。この必修化について、文科省は別にセキュリティ対策を謳っているわけではないですが、子どもたちがコンピューターそのものの構造や仕組みに詳しくなることは、そのままセキュリティ対策へもつながっていきます。

 身の回りに溢れているコンピューター機器は、非常によくできていて、中身がわからなくても、何の気なしに使えてしまいます。ですが、そこで一瞬立ち止まって“どういう原理で動いているんだろう”“何とつながっているんだろう”ということを考えたり、調べて自分なりに理解したりすることが、個人でできる最も効果の高いセキュリティ対策になると言えるでしょう」(岡嶋氏)

 電力を停止したり、交通インフラを混乱させたりするような国家レベルのサイバー犯罪に巻き込まれてしまえば、もちろん一個人としてできることは限られるだろう。しかし、現状の個人向けサイバー犯罪ならば、きちんとした知識を身につけていれば対処できそうだ。

(文・取材=後藤拓也[A4studio])

岡嶋 裕史(おかじま・ゆうし)
中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。富士総合研究所、関東学院大学准教授、同情報科学センター所長を経て、現在は中央大学総合国際情報学部教授、学部長補佐。情報ネットワーク、情報セキュリティが専門。著書に『ハッカーの手口 ソーシャルからサイバー攻撃まで』(PHP研究所)、『構造化するウェブ』(講談社ブルーバックス)などがある。

「中央大学研究者プロフィール 

 

1 2 3

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。