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AAAリーダー記者会見の教訓~「謝罪」をする前に、「謝罪しない」ための「訓練」を。

【この記事のキーワード】

どんなに危機管理をしても、現実には悲劇も起こる

 企業や団体で起こる可能性があるリスクには、偽装、虚偽、改ざん、欠陥、不正受注、整備不良、異物混入、期限切れ、工場爆発、個人情報漏洩、SNS炎上などがある。

 また、業務と関係のある社員の犯罪行為には、不正操作、不正行為、詐欺、横領などがある。社員の犯罪には、痴漢、盗撮、わいせつ、賭博、薬物、交通違反、強盗、襲撃、脅迫状、反社との関係など直接業務と関係のないものもある。

 本来は社内の問題として解決されるべきであったセクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどが社内で解決できなくなり、社員や元社員から通して訴訟を起こされることも増えている。

 ここに書いてみたことは想定内のごく一部だが、皆さんも職場で起こり得ることを書き出してみよう。一般的な問題はもちろん、あなたの職場特有のリスクを想定してみることだ。

 まずは、メモか付箋1枚にひと項目記入してみることだ。代表はもちろん、役員からアルバイト、パートのスタッフも含め全員参加で、それぞれの視点や立場での経験や気づきを書き出し、全員でそれを読み合わせてみるのだ。これこそが「リスクの可視化」である。うちの会社は大丈夫などと言って過信することなく、想定して可視化することが大切だ。

 私が勤めていた吉本興業の大阪の吉本会館は、なんばグランド花月という1000人近い座席がある劇場を核として、地階にも劇場、1・2階にはテナントがあり、上の階層には100人近い数の芸人やスタッフが常駐している楽屋フロアがあった。またその上の階には、マネージャーや経理、総務、営業などのスタッフが100名近くいる。

 そこでは年に数回の「避難訓練」もパターン化しないよう、毎回場所を変えてシミュレーションを行うことにしていた。ある時は舞台の袖、またある時は1階の飲食店。またある時は4階の制作部から出火などというふうにだ。

 訓練は事件や事故を想定して、対処方法を設定するものである。危機管理の上に危機管理があっても、現実には悲劇も起こる。事故を未然に防ぐ、事故を最小限にとどめる。こういった「リスクマネジメント」は、平時の際にこそ必修科目であるといえるのだ。

 「リスク」の想定を「他人事」と言わず、自分ゴトとして想定できる職場なら、次は謝罪訓練のワークショップをやってみよう。みんなから集まったリスクメモをランダムに選び出して、各人が今すぐ何をやっていくかをシミュレーションするのである。

 レストランなら料理に髪の毛が入っていた。テナントビルで開店時刻にシャッターの開いていない店舗が数店舗あった。工場で爆発事故が起こった。社員が食品の賞味期限のシールを貼り直していた。経理担当者が横領をしていた。営業担当者が痴漢で逮捕された。なかにはSNS炎上を体験された方もいるのではないだろうか。客のクレームで出社拒否に陥ってしまった人もいるだろう。

 そういう時、どこの誰がどう動き、どういう連絡網が敷かれ、どのような決定プロセスを経て人々は動き出せるかをシミュレーションするのだ。社長は、役員は、幹部は、現場責任者は、顧問弁護士は……全員参加で即刻動き始めねばならない。

 縁起でもないことを書き並べたが、火災や災害などと同様、企業や団体が直面する「危機」を書き出し、それを可視化し、全員で共有し、それらから目を背けず注視し、対応や対処の仕方を想定しておくことこそが「危機管理」の最たるものといえる。みなさんの無事を祈る。

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