
「BK-Burn That Ad」YouTubeより
ファストフードチェーン「バーガーキング」がブラジルで展開していた痛烈な炎上広告が、話題を呼んでいた。
3月に開始されたキャンペーン「Burn That Ad(あの広告を燃やせ)」の内容は、「バーガーキング」の専用カメラアプリを通してライバルブランドの広告を見ると、その広告にメラメラと火の手が上がり、燃えカスの中からバーガーキングのお得なクーポンが浮かび上がる――という、いささか過激なもの。これは実際の景色に架空の情景を重ねて表示するAR(拡張現実)技術を応用したもので、文字通りの“炎上広告”だ。

「BK-Burn That Ad」YouTubeより
「バーガーキング」は1954年、アメリカのフロリダ州マイアミでオープン。香ばしい“直火焼き製法”や食材へのこだわりが受け、現在世界シェア2位を誇るトップハンバーガーチェーンだ。日本では2003年、マクドナルドとの格安競争に負けて撤退していたが、2007年に満を持しての再上陸を果たし、独自のブランド戦略で着実に店舗数を増やしている。
フードアナリスト協会所属のフードアナリスト・重盛高雄氏に、バーガーキングが仕掛ける過激な“炎上広告”とその戦略、そして世界と日本の広告文化の違いなどについて話を聞いた。
まるでラップバトル!? 欧米のブランド間競争で広がる“比較広告”とは?
バーガーキングは、AR技術を使った“炎上広告”以前にも、過激な宣伝手法がたびたび話題を呼んでいる。
「とにかく“インパクト重視”というのが、バーガーキングが打ち出す広告の特徴です。また、失敗を逆手に取ってライバルと差別化を図る広告戦略を取ることもあります。例えば2017年には、実際に直火焼きグリルからの出火が原因で火事になってしまった店舗写真に、【FLAME GRILLED SINCE 1954(1954年から直火焼き)】というキャッチコピーをつけた広告を発表し、バーガーキング最大の売りである“直火焼き”をアピールしました(笑)。
一方で、バーガーキングは、ライバルブランドへの“イジり”に心血を注いでいるイメージもありますね。特に印象的なのは、業界シェア1位のマクドナルドをイジった広告です。2017年のクリスマスには、マクドナルドに自社の直火焼きグリルを送りつけるというCMを打って、差別化のアピールに挑戦していました。このように、ライバル企業を引き合いに出し、“うちはあなたのところよりこんなに優れている!”と示す広告は“比較広告”と呼ばれていて、欧米ではよく見られる手法です。特にアメリカはパブリシティに関してかなり寛大な傾向があるので、こうした大胆な戦略が打てるのでしょう」(重盛氏)