A.B.C-Z橋本良亮と堤真一のオトナな魅力 異色作「良い子はみんなご褒美がもらえる」

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 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、ときに舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 平成から令和へと元号が改まり、日常生活の中で目に見える変化は感じずとも、現在や未来の日本、そしてそこで生きることについて考えてみたひとは、少なくないと思います。個人の自由が保障された平和な日本を当然のように享受していますが、本当の自由とは何なのか。そんな課題をつきつける舞台が「良い子はみんなご褒美がもらえる」です。

頭の中でオーケストラが。

 俳優とオーケストラのための戯曲、と銘打たれた同作は観客にとって、そしておそらく演者にとっても、一度観ただけでは解釈に揺れる難解な異色作ですが、ジャニーズ事務所所属のアイドル「A.B.C-Z」橋本良亮が、実力派俳優の堤真一とダブル主演に挑んでいます。

 舞台は、1970年代の独裁国家。ある精神病院の病室に、政治犯と妄想癖のある男のふたりが収監されています。名はともにアレクサンドル・イワノフ、同姓同名です。

 アレクサンドル(堤)は、国家に反抗的と思われる思想を理由に捕らえられ精神病院に隔離されたことに抵抗してハンガーストライキをしており、イワノフ(橋本)は、「自分にはオーケストラがついて回っている」という妄想にとらわれていました。その妄想の中のオーケストラの演奏がいまいちだとイワノフは訴えますが、もちろんその演奏は誰にも聞こえません。

 ふたりを“治療”する精神科医は、アレクサンドルには体制に逆らうような意見を持つこと自体が病気だと告げ、イワノフにはオーケストラがいると考えなければ妄想は治まると説きます。アレクサンドルは著名人であり、収監中に死んでしまったら抑圧されている民衆の暴発にもつながりかねず、命の危機にかかわる抵抗をやめるよう説得するために、彼の息子サーシャが病院に送りこまれてきます。

 「良い子はみんなご褒美がもらえる」は、映画「恋におちたシェイクスピア」などで知られるイギリスの劇作家トム・ストッパードの筆により1977年に初演。今上演では、オペラや映画の世界でも活躍する国際的な振付家で演出家のウィル・タケットが演出を担当しました。橋本にとっては海外の演出家のもとでの舞台出演は初のことです。

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