流通段階で死んでいく動物たち
殺処分の数字には決して反映されない犬猫の死は、ペット産業の過剰な供給システムにある。2017年5月30日付けの朝日新聞DIGITAL『子犬・子猫、流通にひそむ闇 死亡リストを獣医師が分析』は、ペット産業における犬猫の流通過程で多くの犬猫が不適切に扱われたために死んでいることをスクープした。
同紙によれば、日本では繁殖から小売りまでの流通過程で毎年約2万5000頭の犬猫が死んでいるという。同紙は大手ペット店チェーンが作成した犬猫の死亡リストを入手し、獣医師らに分析させた。目立った死因は「下痢・嘔吐・食欲不振」だった。次に「パルボウイルス感染症・ケンネルコフ(伝染性気管支炎)・猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)・猫伝染性腹膜炎(FIP)」などがあったという。
この結果は、繁殖・流通段階において衛生管理が行き届いていないことを示している。また、犬猫たちが強いストレスを受けるような劣悪な環境下に置かれていることも予想がつく。特に犬猫たちは、何回もの移動を繰り返す流通に乗せられる。
その流通の主な経路は、繁殖業者から競り市に出され、ペット店で販売されて消費者に買い取られるというものだが、チェーン展開しているペット店の場合は競り市の後にいったん流通拠点に集約してから各店舗に配送することになる。
同紙は、全国の自治体から情報を集めて流通過程で死んだ犬猫の集計を試みている。その結果、2016年度に流通途上で死んだ犬は1万8687頭、猫は5556頭で計2万4243頭としている。
前出の環境省統計資料によれば、同じ2016年度の殺処分は5万5998匹だった。つまり、殺処分の43%に匹敵する数が流通途上で死んでおり、犬に限っていえば、同年の殺処分の1万424匹を上回る数の犬が流通途上で死んでいるのだ。ペット産業がいかに多くの犬猫をビジネスのために殺しているかがわかる。
しかも、ここにはなんとか店頭まで生き延びたものの、売れなかったために悲惨な末路を辿った犬猫は含まれていない。
良心的なペット店と安直な手段に頼るペット店
ペット店に辿り着くまでに多くの犬猫が死に、たとえ無事に店に辿り着いても、売れなければ「処分」されてしまうという現実。
それでもまだ良心的な店は、犬猫の成長に合わせて値段を下げることで、少しでも新しい家族が見つかるように手を打ってはいる。店によっては、最終的には無料にしてでも飼い主を探す所もあるそうだ。
だがすべての店がそのように良心的ではないし、動物愛護の精神を持っているとは限らない。単純に商売と割り切っている店もあるだろう。そのような店は、犬猫に商品価値がなくなると(つまり売れやすい子犬・子猫の時期を過ぎると)、以前は保健所に持ち込んで殺処分にしていた。まるで大量に作った恵方巻きやクリスマスケーキを処分するようにだ。しかし、すでに多くの自治体が殺処分ゼロを目指すようになっており、現在は保健所がこのような持ち込みを拒否できるため、この手は使えなくなった。
そこで、抜け道として、店の名を出さずに個人として保健所に持ち込むこともあるらしい。ここに、保健所に持ち込めなくなった犬猫を引き取る「引き取り屋」なる業者が登場したのだが、これについては後述したい。
その前に、ペット産業で供給を請け負っているブリーダーについて少しだけ触れておこう。