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ひとり親家庭の「働いても低収入」な事情、どう変えられるか。離婚で損なわれた「自己肯定感」を取り戻すところから/赤石千衣子さんの提言

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赤石千衣子さん

 「平成28年国民生活基礎調査」によると、ひとり親世帯の貧困率は50.8%。平成28年(2016年)11月時点で、ひとり親世帯の半数以上が「貧困」に陥っていることが伺える。

 しかしながら「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、ひとり親の就労率は母子家庭81.8%、父子家庭85.4%。大半のひとり親は働いているのだ。日本のひとり親の就労率は諸外国のひとり親家庭と比べても高いが、“働いているけれど低収入”という傾向が見られる。母子家庭の母自身の平均年収は243万円(うち就労収入は200万円)、父子家庭の父自身の平均年収は420万円(うち就労収入は398万円)となっている。

 また、就労父子家庭では「正規の職員・従業員」68.2%、「パート・アルバイト等」6.4%なのに対して、就労母子家庭では「正規の職員・従業員」44.2%、「パート・アルバイト等」43.8%と、派遣や契約社員も含めると母子家庭のひとり親の5割が非正規雇用で働いている。

 ちなみに「平成29年国民生活基礎調査」によると、児童がいる世帯の平均総所得は739.8万円、中央値は648万円。また、児童のいる世帯における末子の母の仕事状況は、「仕事あり」が70.8%で、働く母親の割合が初めて7割を超えている。ただし母親全体で見たところ、「正規の職員・従業員」24.7%、「非正規の職員・従業員」37.0%、「その他」9.1%、「仕事なし」29.2%という結果なので、ひとり親世帯であろうが共働き世帯であろうが、安定した雇用と収入を得ている母親は多数派とは言えない。

 日本には児童扶養手当をはじめとする、さまざまなひとり親支援が存在し、就労に関する支援もある。しかし一方で、ひとり親世帯の半数以上が「貧困」に陥っているという状況。これらの支援をひとり親たちが利用しているのか、利用して成果が上がっているのか疑問だ。

 とりわけ、職業と収入の安定は生活の基盤。たとえば専業主婦だった女性が子連れで離婚した時、手始めに「パート就労」したとする。だが子の成長に伴い、パート就労だけで生活するに十分な賃金が得られなくなることも考えられ、その場合は安定した収入を得られる仕事への転職が必要になってくるだろう。このとき、適切な支援制度に接続できれば、「貧困」に陥らず済むかもしれない。

 そこで、就労支援をはじめとするひとり親支援の現状と問題点、そして今求められるひとり親支援の在り方について、しんぐるまざあず・ふぉーらむ代表理事を務め、多くのひとり親家庭を知る赤石千衣子氏に話を聞いた。

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赤石千衣子(あかいし・ちえこ)/NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長
当事者としてシングルマザーと子どもたちが生き生きくらせる社会をめざして活動中。社会保障審議会児童部会ひとり親家庭の支援の在り方専門委員会参加人。社会福祉士。国家資格キャリアコンサルタント。全国の講演多数。著書に『ひとり親家庭』(岩波新書)、共著に『災害支援に女性の視点を』、編著に『母子家庭にカンパイ!』(現代書館)、『シングルマザー365日サポートブック』ほかがある。

無理なく働ける職場かどうか

 未就学児を抱えて夫と死別または離婚したとき、シングルマザー本人が被扶養の立場ではなく安定した収入を得られていれば、経済的なダメージは抑えられるかもしれない。だが、結婚あるいは出産のタイミングで退職して専業主婦になっていた場合、職探しをするにあたってまず立ちはだかるのは、子の預け先をどうするかという問題だ。

 貯金が少ない、養育費が貰えず家計が苦しい、今月の家賃さえ払えるかわからないといった状況ならば尚更、一刻も早く就業し給与を得たいが、「まだ就労していないから、保育園に入園できない」ということになってしまう。また、ひとり親で入園選考のポイントが加算されたとしても、求職中ということで育休明けの親よりはポイントが低くなる。ひとり親で経済的余裕もない、それなのに未就学児の我が子が認可保育園に入れないとなれば、死活問題だ。

「これだけ待機児童が増えているので、安定した収入を目指して職業訓練を受けるべく、既存の制度を活用したくても、保育園に入れない。だから保育園問題というのは、非常に大きいかと思います。ひとり親の就労を支援する良い制度があっても、絵に描いた餅になってしまうんですね。

そこで最近は、ハローワークや母子・父子福祉センターなどで、保育付きの職業訓練や講座も始まっています。ただ、まだ数が少なく認知度も低い。そして、どうしても職業訓練校の得意な科目になってしまうから、利用者とのミスマッチが発生しているようにも感じます」(赤石さん/以下同)

 無事に子の預け先が決まり、就労もできたとして、“その先”にある日常に無理はないか、という視点も必要だ。職業訓練や就労支援にあたり、支援者が“その先”を見据えることも大事ではないかと、赤石さんは提言する。

「たとえば医療事務の仕事だったら、レセプト作成の時期に残業が発生する職場もあります。だからもしお子さんが小さい方が医療事務の講座を受けることを希望したら、その後の働き方までちゃんと告知して、残業時に子どもを預かれる家族がいるのか、延長保育を利用できるのか、夜の手立てがあるのかを聞いた上でお勧めしなきゃいけないなと、私たちは考えています。

医療・介護・福祉は需要のなくならない仕事ですから、それらの資格を取得することは決して悪くはない。けれど、特にお子さんが小さいうちは、資格を取った後や働き始めた後のことも加味した支援が必要です」

 一方で、家族の助けや延長保育の利用などが出来ず、パート就労など非正規の仕事につき、その後のスキルアップが出来ない状態が何年も続くと、それも新たな問題を生む。

「お子さんが小さいうちは、ひとり親自身も“その人が抜けても回れる仕事”や、従業員数が多いなどで“比較的休みを取りやすい職場”を選ぶ傾向にあり、それもあって、パート就労などの非正規が多いです。離婚などによる色々なダメージを考えると、そういう時期があってもいいと私は思いますが、その後にスキルアップをしていかないと収入は上がりません。子どもの成長とともに、子育てにかかるお金は増えるのです。しかし、残念ながらみなさん、なかなかそこまで動けないという現状があります」

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